首にかけると「北」が震える「方位自身」|方向音痴を直す、第六感デバイス
ProtoPedia の作品「方位自身(2019-現在)」を2人のMCが初心者目線で紹介。方位磁針は回しても針が北を向き続けます。方位自身は、首にかけると、体をどちらに向けても北側の振動だけが震え続けるウェアラブルデバイス。地磁気センサと12個の振動部品の仕組み、作者が自ら実験台になった7日間の記録、京都駅でのリベンジマッチ、部品の生産終了をきっかけに作り直した「方位自身2.0」まで。
チャプター
0:00オープニング0:20北が震える首かけデバイス1:02方向音痴あるある2:21方位磁針の、体で感じる版3:21システム構成4:40まずは自ら実験台に6:37ヒーローズ・リーグ2019 で2つの賞8:16開発素材9:08エンディング
文字起こし(84行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、方位自身。首にかける、北が分かるデバイスです。
- BANNO
- 方位自身?方位磁針じゃなくて、方位、自身なんですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。方位磁針の「針」を、自分自身の「自身」にした名前なんですよ。
- HIGEDARUMA
- 首にかけておくと、いつも北の側だけが、ブルッと震えるんです。
- BANNO
- 作ったのは、痛快工学というチーム。吉松駿平さんたち、4人の作品です。
- BANNO
- ひげだるまさん、方向音痴って、自覚あります?
- HIGEDARUMA
- うーん、地図アプリを、つい自分の向きにくるくる回しちゃいますね。
- BANNO
- それ、作品ページの、方向音痴あるある、にそのまま書いてありますよ。
- BANNO
- 駅の中で迷って、違う改札に入っちゃう。あっちの方だよ、と指されても、ピンとこない。
- HIGEDARUMA
- 耳が痛いです。作者の吉松さんも、まさにその一人だったんです。
- HIGEDARUMA
- 京都駅で地下鉄に乗り換えようとして、違うホームに入ってしまった。
- HIGEDARUMA
- そのときは、近くにいた観光客の方に道を教えてもらって、なんとか切り抜けたそうです。
- HIGEDARUMA
- はい。それ以来、自分に自信が持てなくなってしまった、と動画で話しています。
- BANNO
- 動画では明るく話していますけど、本人はけっこう落ち込みますよね。
- HIGEDARUMA
- そんなとき、ある雑誌の記事を読んだんです。
- HIGEDARUMA
- 人間にも、地球の磁場を感じる力が備わっているかもしれない、という研究の記事でした。
- BANNO
- 磁場、つまり、方位磁針の針を北に向けている、あの見えない力のことですね。
- HIGEDARUMA
- そうです。だったら、北を振動で体に送り続ければ、方向音痴を直せるんじゃないか。そう考えたのが始まりです。
- BANNO
- 北を振動で送る、って、具体的にはどういうことですか?
- HIGEDARUMA
- 方位磁針を思い出してください。本体をくるっと回しても、針はずっと北を向いていますよね。
- BANNO
- はい。手の中で回しても、針だけは動かない。
- HIGEDARUMA
- 方位自身は、それを振動でやるんです。体をどっちに向けても、北に近い場所だけが震え続けるんですよ。
- BANNO
- じゃあ、北を向いていたら、のどの前あたりが震えて。
- BANNO
- そこから右に90度向いたら、今度は左の首すじが震える、ということですか?
- HIGEDARUMA
- その通りです。画面を見なくても、首の感覚だけで、今どっちが北かが分かるんです。
- BANNO
- それなら、地図を回す必要もないし、一度来た道も、迷わず帰れそうですね。
- HIGEDARUMA
- コンテストの審査員も、機能がシンプル、誰でも使える、方位以外にも使える、と実用性の高さを決め手に挙げていました。
- BANNO
- ひげだるまさん、中身はどうなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- まず、北を知る部品があります。地磁気センサといって、地球が持っている弱い磁石の力を測るんです。
- HIGEDARUMA
- それと、体の傾きを測る、加速度センサ。この2つを組み合わせて、首の向きと北の方角を計算しています。
- BANNO
- スマホの地図で、自分の向きが分かるのと同じ仕組みですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。スマホの中にも、同じ種類のセンサが入っているんですよ。
- HIGEDARUMA
- そして首のまわりには、震える部品が、12個、ぐるっと並んでいます。
- BANNO
- 12個。時計の文字盤みたいですね。
- HIGEDARUMA
- まさに。その中で、北にいちばん近い1つだけを震わせるんです。スマホのバイブを、小さくした部品だと思ってください。
- BANNO
- 光っているのは何ですか?
- HIGEDARUMA
- LEDです。振動に体が慣れるまでは、どこが震えているか分かりにくいので、光でも北を見せてくれる、補助輪なんです。
- HIGEDARUMA
- 全体の頭脳は、ESP32という、手のひらに乗る小さなコンピュータ基板です。
- BANNO
- センサで北を測って、北側の1つを震わせる。言葉にすると、すごくシンプルですね。
- BANNO
- 実際に着けてみて、どうだったんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 吉松さんは、まず自分が実験台になって、7日間、記録をつけているんです。
- HIGEDARUMA
- 1日目は、どこが振動してるの?から始まって、2日目は、前かがみだと感じにくい。
- BANNO
- 最初は、どこが震えているのかも分からないんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。それが、3日目には、姿勢が良くなる、と書いてあるんです。
- BANNO
- えっ、どうして姿勢が?
- HIGEDARUMA
- 振動をちゃんと感じようとして、自然と背すじが伸びたそうなんです。
- HIGEDARUMA
- そして、4日目。外したあとも、振動を感じる。
- BANNO
- あ、スマホが鳴っていないのに、ポケットが震えた気がする、あれですか?
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。作者は、数週間使い続ければ、方角を感じる第六感が身につくかもしれない、と考えているんです。
- HIGEDARUMA
- 名付けて、マグネティックシックスセンス。磁気の第六感、という意味です。
- BANNO
- まだ確かめられたわけではないけど、人の感覚を、道具で1つ増やせるかもしれない。わくわくしますね。
- HIGEDARUMA
- しかも動画の最後には、方位自身を着けて、もう一度京都駅に挑むんです。
- BANNO
- リベンジマッチですね!結果はどうでした?
- HIGEDARUMA
- 無事に勝利です。今では、知らない場所にも、ドヤ顔で行けるようになったそうですよ。
- BANNO
- ドヤ顔!自信まで取り戻せたんですね。
- BANNO
- これ、方角以外にも使えそうです。子どもに着けてもらって、保護者のスマホの方向が震えたら、迷子防止になりますよね。
- HIGEDARUMA
- 作品ページでも、まさにそのアイデアが挙がっています。道順は言わずに、行き先の方向だけを伝える使い方もできるんです。
- BANNO
- 配達の人なら、スマホを見なくても、届け先のだいたいの方向が分かる。ツーリングで気ままに走るときにも良さそうですね。
- HIGEDARUMA
- この作品は、2019年の、ヒーローズ・リーグというものづくりのコンテストで、2つの賞をとっています。
- BANNO
- オートデスクの審査員は、年齢や性別、国にかかわらず、ニーズがありそう、と書いていますね。
- HIGEDARUMA
- そして、3年後。吉松さんたちは、すべての部品を見直して、方位自身2.0を作るんです。
- HIGEDARUMA
- ところが、部品を探していたら、使っていた北を知るセンサが、まさかの生産終了。
- BANNO
- えっ、心臓部の部品がもう買えないんですか?
- HIGEDARUMA
- はい。そこで、もっと賢い、9軸センサに乗り換えたんです。北と傾きに加えて、回転の速さも測れるセンサです。
- HIGEDARUMA
- その結果、精度が上がって、前かがみやのけぞった姿勢でも、ちゃんと北が分かるようになりました。
- BANNO
- 困った出来事を、パワーアップのきっかけにしちゃったんですね。
- HIGEDARUMA
- 向きのずれを直す調整も、電源を入れて首にかける、その動作の間に自動で終わるようにしています。
- BANNO
- 使う人は、何もしなくていいんですね。
- HIGEDARUMA
- 電池も、Wi-FiもBluetoothも使わない作品だから、小さくていい、と割り切ったんです。
- HIGEDARUMA
- それで、Maker Faire Tokyoという、ものづくりの展示イベントの土日2日間で、充電切れは1回ほど。連続でおよそ8時間動いたそうです。
- BANNO
- 8時間なら、1日のお出かけには十分ですね。
- HIGEDARUMA
- 形も、ぐるっと一周の輪っかから、首かけスピーカーのような形に変えて、後ろで留めなくてよくなりました。
- HIGEDARUMA
- 使われている道具は、この3つです。
- HIGEDARUMA
- 頭脳のESP32に、形を設計するFusion 360。部品は手に入るものばかりなんです。
- BANNO
- 作ったのは、チーム、痛快工学の、4人です。
- BANNO
- 今日できる、いちばん小さな一歩です。
- BANNO
- スマホのコンパスアプリを開いて、今いる部屋の、北の壁を見つけてみてください。
- HIGEDARUMA
- 見つけたら、次に外を歩くとき、北はあっちだな、と一度だけ思い出してみる。それが、第六感の、最初の練習です。
- BANNO
- 私も今日から、北を意識して歩いてみます。もう地図は回しません。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、首にかけるだけで北が分かる、方位自身でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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