歩けない息子が、自分の力で小学校へ「子供成長支援モビリティ ToMobility Ver2」|お父さん手作りの電動モビリティ
ProtoPedia の作品「子供成長支援モビリティ ToMobility Ver2」を2人のMCが初心者目線で紹介。脳性まひで歩くことが難しい息子さんのために、お父さんエンジニアのおぎ-モトキさんが作った電動の乗り物です。市販の電動車椅子に乗れない・操作が分からないという壁から始まり、近所の景色や木漏れ日が好きだと見つけ、前ボタン1つから操作を覚え、好きなおもちゃを操縦ボタンに改造。Ver2 ではいつもの車椅子ごと乗れる電動の台車にして、先生でもボタン1つで使える仕組みと、ぶつかりそうなら自動で止まる機能を加え、1年半かけて初めての自力登校を実現しました。友達と同じ目線で遊べるようになった学校での様子まで。
チャプター
0:00オープニング0:21自分の力で、行きたいところへ1:08作者は、お父さんエンジニア2:48最初は、拒否反応4:51Ver1:車椅子のレバーを動かす6:27Ver2:学校で毎日使うために8:14初めての、自分の力での登校9:34作者 おぎ-モトキさん10:34エンディング
文字起こし(107行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、子供成長支援モビリティ ToMobility Ver2。
- BANNO
- モビリティって、乗り物のことですよね。どんな乗り物なんですか?
- HIGEDARUMA
- 歩くことが難しい男の子のために、お父さんが作った電動の乗り物なんです。
- BANNO
- えっ、お父さんの手作りなんですか!
- HIGEDARUMA
- そうなんです。いつもの車椅子ごと乗れる電動の台車で、息子さんが自分でボタンを押して進めるんですよ。
- BANNO
- 今日は、その息子さんが自分の力で小学校に登校するまでのお話なんです。
- BANNO
- 作ったのは、おぎ-モトキさん。息子さんは、生まれてまもなく脳性まひと診断されました。
- HIGEDARUMA
- 脳性まひは、生まれる前後に脳が傷ついて、体を思うように動かしにくくなる障害なんです。
- BANNO
- 息子さんは6歳になっても、ひとりで座ったり立ったりするのが難しかったそうです。
- HIGEDARUMA
- 毎日リハビリで、歩く練習も続けていたんですよね。
- BANNO
- でもお父さんは、それだけで良いのだろうか、と考えたんです。
- BANNO
- 子どもって、行きたいところに自分で行って、いろんなものに出会って育ちますよね。
- HIGEDARUMA
- あのおもちゃを取りに行きたい、みたいな当たり前の気持ちですね。
- BANNO
- そうなんです。歩けないと、その気持ちを行動に移すチャンスまでなくなってしまう。
- HIGEDARUMA
- だから歩く以外の方法で、自分で動きたい、という気持ちを引き出そうとしたんです。
- BANNO
- でも、子ども用の電動車椅子って、売っていますよね?
- HIGEDARUMA
- それが、使えなかったんです。理由は3つあります。
- HIGEDARUMA
- 1つ目、座っていられないので乗れない。2つ目、レバーの操作が分からない。
- HIGEDARUMA
- 3つ目、いつも押してもらっていたので、自分で動いたことがなかったんです。
- BANNO
- しかも、公的な補助で電動車椅子を作るには、安全に操作できることが条件だそうで。
- HIGEDARUMA
- 練習しないと上手くならないのに、最初から操作できないと手に入らない。矛盾ですよね。
- BANNO
- そこで出てきたのが、作者のこの言葉です。
- HIGEDARUMA
- ちょうどよい市販品がなければ、工夫して自分で作るしかない!
- BANNO
- とはいえ、最初からうまくいったわけじゃないんですよね。
- HIGEDARUMA
- はい。子ども用の電動の乗り物を試したら、怖がってしまったんです。
- HIGEDARUMA
- 慣れない乗り物、苦手なモーターの音、急に動き出す怖さ。それが重なってしまって。
- BANNO
- 家の中で試したときは、5分で、早く降ろせ!って叫んだそうです。
- HIGEDARUMA
- 部屋は狭いし、乗る目的もなかったから、楽しくなかったんですよね。
- BANNO
- じゃあ、何なら楽しいんだろう、って探したんですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。息子さんが強く興味を示したのは、いつも車の窓から見ている近所の景色でした。
- BANNO
- だから、ゴールを近所の馴染みの道を走ること、にしたんですね。
- HIGEDARUMA
- 公園で30分ほど走ってみると、木漏れ日の下が好きだということも分かったんです。
- BANNO
- 機械より先に、その子の楽しいを見つけているのが素敵ですね。
- BANNO
- 操作のほうは、どう覚えたんですか?
- HIGEDARUMA
- 最初は、前・右・左の3つのボタンを渡したら、思わぬ方向に動いて泣いてしまって。
- HIGEDARUMA
- そこでお父さんかお姉ちゃんが抱っこして、お手本を見せることにしたんです。
- HIGEDARUMA
- しかも最初は、真ん中の前ボタンだけ。前に進むボタンだよ、と1つに絞ったんですよ。
- BANNO
- それで、どうなりました?
- HIGEDARUMA
- 週末に3回くらい練習したら、自分で前ボタンを選べるようになったんです。
- BANNO
- すごい!慣れてきたら、気づけば1時間近く走り続けることもあったそうです。
- HIGEDARUMA
- それから、川沿いの道では、毎回同じ場所で右ボタンを押したんです。3回やって3回とも。
- BANNO
- そっちに行きたい、っていう意志ですよね。
- HIGEDARUMA
- 作者も、彼なりにしっかり意志を表現している、と嬉しくなったそうです。
- BANNO
- おばあちゃんとお姉ちゃんを乗せて、運転したこともあるそうですよ。
- HIGEDARUMA
- いつもは押してもらう側の息子さんが、家族を運んであげる側になったんですね。
- BANNO
- ひげだるまさん、最初の乗り物は、どうやって作ったんですか?
- HIGEDARUMA
- 借りてきた大人用の電動車椅子に、後から機械を取り付けたんです。
- HIGEDARUMA
- 電動車椅子には、進む方向を決めるレバーがありますよね。あれを、モーターで倒すんです。
- BANNO
- えっ、レバーを機械が押しているってことですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。サーボモーターという、決めた角度にぴたっと動くモーターを2つ使います。
- HIGEDARUMA
- 1つが前と後ろ、もう1つが左と右。人の指の代わりに、レバーを倒してくれるんですよ。
- BANNO
- 車椅子の中の配線は、いじらなくていいんですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。部品は3Dプリンターで作って、ESP32という小さなコンピューターで動かします。
- BANNO
- ボタンのほうは、どうつながっているんですか?
- HIGEDARUMA
- ここが面白いところで、好きなおもちゃを改造して、そのまま操縦するボタンにできるんです。
- HIGEDARUMA
- Nintendo Laboのバイク型のコントローラや、電車でGO!のコントローラも使っていました。
- BANNO
- 好きなもので遊んでいたら、いつのまにか乗り物を動かしている。それは楽しいですね!
- BANNO
- でも、外を走るとなると、危なくないですか?
- HIGEDARUMA
- そこで、付き添う大人用の、片手で持てる無線のリモコンも作ったんです。
- HIGEDARUMA
- 道の傾きで少しずつ曲がっても、親指で左右を直せる。押し込めば、すぐに止まります。
- BANNO
- 片手だから、息子さんと手をつないだまま使えるんですね。
- BANNO
- そして今日の主役、Ver2です。何が変わったんですか?
- HIGEDARUMA
- 前の乗り物で練習を続けること、約1年半。今度は、小学校で毎日使うことを目指したんです。
- HIGEDARUMA
- 学校では、電動の車椅子と、押してもらう車椅子を、場面で使い分ける必要があって。
- BANNO
- 2台を行ったり来たりするのは、大変そうですね。
- HIGEDARUMA
- そこで、いつもの車椅子ごと乗せられる、電動の台車にしたんです。
- HIGEDARUMA
- 後ろにスロープを付けられるので、車椅子に座ったまま乗り降りできるんですよ。
- BANNO
- 学校の先生は、機械が得意とは限らないですよね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。だから電源ボタン1つで、コントローラーとつながって、走れる状態になります。
- HIGEDARUMA
- 先生に何度も触ってもらって、使いにくいところを直したそうです。
- BANNO
- 使う人に合わせて直す。まさにユーザーテストですね。
- BANNO
- 休み時間とか、周りに子どもがいっぱいいる場面はどうするんですか?
- HIGEDARUMA
- ぶつかりそうになると、自動でゆっくりになって、止まるんです。
- HIGEDARUMA
- レーザーで周りの距離を測るセンサーと、奥行きが分かるカメラで、前の方を広く見ているんですよ。
- BANNO
- 図で見ると、どうなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- 台車を動かすのはESP32。おもちゃのコントローラーも介助リモコンも、Wi-Fiでつながります。
- HIGEDARUMA
- ぶつかりそうかどうかは、Jetson Nanoという小さなコンピューターが判断しています。
- HIGEDARUMA
- ロボットを作るためのソフトの土台、ROSを使っているんです。
- BANNO
- ちなみに、止まったときは、ライトで知らせる仕組みもあるそうです。
- HIGEDARUMA
- なぜ止まったのかを、本人にも分かるようにするためなんですよ。
- BANNO
- そして、いよいよ小学校です。
- HIGEDARUMA
- 自分の力で登校できるように。これを目標に、台車づくりと練習を、家族で1年半繰り返したんです。
- BANNO
- そして、初めて自分の力で、学校の正面入り口までたどり着いたんです。
- HIGEDARUMA
- 作者は、父ちゃん、嬉しいよ!と書いています。
- BANNO
- 読んでいるこっちまで、胸が熱くなりますね。
- BANNO
- 友達の反応はどうだったんですか?
- HIGEDARUMA
- 台車に乗ると目線が高くなるので、友達と同じ目線で遊べるようになったんです。
- HIGEDARUMA
- 見た目も戦艦みたいでかっこいい、と人気なんですよ。
- BANNO
- 一緒に遊ぼう!とか、僕も乗ってみたい!って、友達が寄ってくるそうです。
- HIGEDARUMA
- 息子さんが使わないときは、電車でGO!のコントローラーで、友達が乗って遊ぶこともあるんです。
- BANNO
- 移動の道具が、友達と遊ぶきっかけになっているんですね。
- HIGEDARUMA
- 息子さんは、話すことが難しいんです。でも自分で動く姿を見せると、ちゃんと分かってるんだ、と周りに伝わるんですよ。
- BANNO
- 運動会では、4年越しのチャレンジで、初めて自分の力でゴールテープを切ったそうです。
- HIGEDARUMA
- 大きな歓声が苦手で、何度も止まりながら、それでも前を向いてゴールしたんです。
- BANNO
- 作者のおぎ-モトキさんは、お父さんで、エンジニアです。
- HIGEDARUMA
- この作品は、ヒーローズ・リーグ 2021で、3つの賞を受賞しています。
- BANNO
- 最新版のVer3も、ProtoPediaで開発が続いているそうですよ。
- HIGEDARUMA
- 作り手として刺さるのは、技術より先に、その子の楽しいを探しているところなんです。
- BANNO
- ボタンも、前ボタン1つから始めていましたよね。
- BANNO
- じゃあ、今日できる、いちばん小さな一歩です。
- HIGEDARUMA
- 身近な誰かの、好きなものを1つ思い浮かべてみてください。それが、ものづくりの入り口になります。
- BANNO
- 作る人は、まず作品ページとブログで、乗り物ができるまでの写真を見てみてくださいね。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、息子さんが自分の力で動くための、お父さん手作りの乗り物、ToMobility Ver2でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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