一歩ごとに音と光が返ってくる靴「歩行リハビリエンタメシステム Melody Shoes」|歩けない息子のために父が作った
ProtoPedia の作品「歩行リハビリエンタメシステム Melody Shoes」を2人のMCが初心者目線で紹介。生まれてから一度も歩いたことがない息子さんのために、お父さんエンジニアが作った、一歩踏み出すたびに大好きな音楽・光・振動が返ってくるリハビリ用の仕掛けです。歩く楽しさの記憶がない子にとってリハビリがつらい理由、5台作ってやっと見つけた答え、左右交互に歩くと音楽が進むルールの工夫、そして足踏みをキーボードの入力に変えてゲームやロボットとつなぐ広がりまで。
チャプター
0:00オープニング0:20一歩ごとに、音と光が返ってくる1:016歳でも、座る・立つが難しい2:23作っては試す、を5台3:58足の裏の感圧センサーが「踏んだ」に気づく5:50装置がなくても、リハビリに取り組めるように7:10息子のための技術を、ほかの子どもたちへ8:24エンディング
文字起こし(74行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、歩行リハビリエンタメシステム、Melody Shoes。
- BANNO
- メロディシューズ。名前からして、音が鳴る靴ですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。一歩踏み出すたびに、大好きな音楽と光と振動が返ってくるんですよ。
- HIGEDARUMA
- 作ったのは、歩けない息子さんのために電子工作を続けてきた、お父さんエンジニアです。
- BANNO
- 歩く練習を、子どもが自分からやりたくなる。今日はその仕掛けの話ですね。
- BANNO
- そもそも、息子さんはどんな状況だったんですか?
- HIGEDARUMA
- 生まれてすぐ、脳性まひと診断されたんです。体を思うように動かしにくい障害ですね。
- HIGEDARUMA
- 6歳の時点でも、ひとりで座ったり立ったりするのが難しかったそうです。
- BANNO
- それで、歩くリハビリをしていたんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。でも、息子さんにとってリハビリは、ただつらいだけの時間だったんです。
- BANNO
- うーん。でもリハビリって、また歩けるようになりたい、で頑張るものじゃないですか?
- HIGEDARUMA
- そこなんです。お年寄りやケガをした人なら、昔みたいに歩きたい、が理由になりますよね。
- HIGEDARUMA
- でも息子さんは、一度も歩いたことがない。歩けると楽しい、という記憶そのものがないんですよ。
- BANNO
- あっ…知らない楽しさのために頑張るのは、大人でも難しいですね。
- HIGEDARUMA
- 実際、歩行器に乗せるだけで嫌がって、離れようとしていたそうです。
- HIGEDARUMA
- 作者は、こう考えたんです。やりたくなければ、やりたくなる仕組みをつけていこう、と。
- BANNO
- 頑張らせるんじゃなくて、やりたくさせる。発想がまるごと逆なんですね。
- HIGEDARUMA
- 歩くたびに大好きなものが返ってくれば、それが楽しみで、自分から足を出すんじゃないか。そう考えたんです。
- BANNO
- でも、何が好きかって、言葉で聞くのは難しいですよね。
- HIGEDARUMA
- だから、作っては履いてもらって、反応を見る。これを、5台目まで繰り返したんです。
- HIGEDARUMA
- 1台目は、踏むと音が鳴るだけ。線は足に絡まるし、どこで鳴っているかも分からなくて、反応はほとんど無かったんです。
- HIGEDARUMA
- 転機は2台目です。小学1年生の娘さんと2人で、段ボール工作のゲーム、ニンテンドーラボで試しに作ったんです。
- BANNO
- 娘さんも一緒に!それで、どうだったんですか?
- HIGEDARUMA
- 息子さんの反応がすごく良くて。ここで、光と振動が大事だ、と気づいたんです。
- BANNO
- じゃあ、靴を光らせれば解決ですね。
- HIGEDARUMA
- それが、靴を光らせたら、光を見ようとして下ばかり向いちゃったんです。前に置いた小さな画面にも、見向きもしない。
- BANNO
- あっ、それだと前に進めない!
- HIGEDARUMA
- そして5台目。歩行器の前いっぱいに、光るLEDの棒を付けたんです。
- HIGEDARUMA
- これに、ついに息子さんが食いついたんですよ。
- BANNO
- やった!前を向いたまま光が見られるから、ですね。
- HIGEDARUMA
- リハビリのたびに毎回使って、3か月。不器用ながらも左右交互に足を出して、少しずつ前に進めるようになったんです。
- HIGEDARUMA
- 作者は、わずか数歩だけど、作り手の願いが現実になった瞬間、父ちゃん、嬉しいよ、と書いています。
- BANNO
- …その数歩、すごく大きな数歩ですね。
- BANNO
- ここで仕組みを教えてください。足を踏んだって、どうやって分かるんですか?
- HIGEDARUMA
- 足の裏に、踏まれる力を感じ取る薄いシートを付けます。感圧センサーと呼ばれる部品です。
- HIGEDARUMA
- 踏んだら、手のひらサイズの小さなコンピューター、ESP32が判断して、音楽と光と振動を返すんです。
- BANNO
- 踏む、気づく、返す。流れはシンプルなんですね。振動はどこで鳴るんですか?
- HIGEDARUMA
- センサーの上に振動するモーターを重ねてあるので、踏んだ瞬間に足の裏がブルッとするんです。
- HIGEDARUMA
- さらに、ルールにも工夫があるんですよ。
- HIGEDARUMA
- 左右交互に踏むと音楽が先へ進む。でも片足ばかり続けて踏むと、失敗の音が鳴るんです。
- BANNO
- 遊んでいるうちに、交互に歩く感覚が身につくわけですね。ゲームみたい!
- HIGEDARUMA
- それから、長く歩くと線が引っかかるので、足に付ける部分は無線に。安全のため、充電池を避けて単四電池2本で動かしています。
- BANNO
- 足にセンサーを付けるのが、苦手な子もいそうですけど。
- HIGEDARUMA
- そこも考えてあって、足の検出の仕方は4種類。足に付けられない子なら、歩行器の揺れで歩いたことを見つけます。
- BANNO
- その子に合わせて選べるんですね。リハビリの先生にも使いやすいんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- リハビリの先生と一緒に、使っては直すを繰り返したんです。踏む強さの感度はつまみで調整、曲はパソコンでファイルを入れ替えるだけ。
- BANNO
- プログラムが分からない先生でも、子どもを待たせずに調整できる。現場目線ですね。
- HIGEDARUMA
- 使った部品は、ESP32、M5StickC Plus、M5Stamp。どれもネットで買えます。
- BANNO
- 息子さんは、その後どうなったんですか?
- HIGEDARUMA
- 2020年以降は、この装置を使わなくても、歩行リハビリに取り組めるようになったそうです。
- BANNO
- 靴を卒業!すごい。じゃあ、Melody Shoesの役目も終わり、ですか?
- HIGEDARUMA
- それが、リハビリの現場や支援学校から、使いたいという声が届いて、2022年11月に新しい版を作りました。
- BANNO
- 息子さんのための道具が、ほかの子どもたちへ。広がっていくんですね。
- HIGEDARUMA
- ただ、いろんな子に使ってもらって分かったのが、刺さるものは、10人いれば10人とも違う、ということなんです。
- BANNO
- 確かに。光より電車が好き、ゲームが好き、って子もいますよね。
- HIGEDARUMA
- そこで、本体がキーボードのふりをする機能を足したんです。左足を踏むとスペースキー、みたいに。
- BANNO
- 足踏みが、キーを押したことになる?それで何ができるんですか?
- HIGEDARUMA
- キーで動くものなら、何とでもつながるんです。歩くたびに、改造したロボットのおもちゃが一緒に前に進んだり。
- HIGEDARUMA
- iPadの、ボタンひとつで画面を操作できる機能を使えば、お店で売っているゲームアプリも足踏みで遊べます。
- BANNO
- その子の大好きなゲームが、そのままリハビリになるんですね!
- BANNO
- 作ったのは、おぎ-モトキさん。家族のためのモノづくりを続けている、お父さんエンジニアです。
- HIGEDARUMA
- 作者は、息子のために作った技術が、同じような子どもたちや家族の役に立てば嬉しい、と書いています。
- BANNO
- コンテストでも評価されたんですよね。
- HIGEDARUMA
- はい。ヒーローズ・リーグ2022でCIVICTECH賞、M5Stackのコンテスト2023で研究アイデア賞をもらっています。
- BANNO
- 作者のブログやデモ動画のリンクは、概要欄に置いておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩。自分や家族の、続かないことをひとつ思い浮かべてください。
- BANNO
- そこに、その人の大好きなごほうびを、ひとつだけ足してみる。好きな曲を流す、とかで十分です。
- HIGEDARUMA
- もう一歩いくなら、iPadの設定のアクセシビリティから、スイッチコントロールをのぞいてみてください。
- HIGEDARUMA
- ボタンひとつで、こんなに操作できるのかと驚きますよ。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、歩くたびに大好きが返ってくる靴、歩行リハビリエンタメシステム、Melody Shoesでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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