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150年の打ち心地をパソコンへ「タイプライター・キーボード」|ハンマーそのものをスイッチにした自作キーボード
ProtoPedia の作品「タイプライター・キーボード」を2人のMCが初心者目線で紹介。打ち心地のよいキーボードを探していた作者は、150年かけて進化してきたタイプライターなら最高の打鍵感を持っているはずだと考えました。機械にはなるべく手を加えず、金属の本体とつながったハンマー(活字棒)そのものをスイッチにして打鍵を読み取る仕組み、入力ピンが足りない問題や、ハンマーが出ないスペース・改行・シフトを光センサーと接触で検知した工夫、レバーで紙を送るキャリッジリターンで改行できる体験まで。ヒーローズ・リーグ 2022 特別賞。
チャプター
0:00オープニング0:20150年の打ち心地を、パソコンへ1:16最高の打ち心地はどこに?2:33壊さずに、どうやって読み取る?4:03壁1: 読み取る足が足りない6:08ヒーローズ・リーグ 2022 特別賞7:15使われている部品8:13エンディング
文字起こし(69行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、タイプライター・キーボード。
- BANNO
- 写真を見ると、どう見ても昔のタイプライターですよね。これがキーボードなんですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。昔ながらの機械のタイプライターを、パソコンで文字を打てるキーボードにした作品なんですよ。
- HIGEDARUMA
- しかも、タイプライターの打ち心地は、ほぼそのまま残しているんです。
- BANNO
- 打ち心地はそのままで、パソコンに文字が打てるんですか!
- HIGEDARUMA
- デモ動画では、タイプライターを打つと、横の画面に文字が次々と出てくるんです。作者の字幕は、なかなかよい打鍵感です。
- BANNO
- 作ったのは、akita11さん。ヒーローズ・リーグ2022で特別賞をとった作品ですね。
- BANNO
- お気に入りのペンの書き味って、ありますよね。キーボードにも、そういうこだわりがあるんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- ありますね。キーを押したときの指の手応え、打鍵感って言うんですけど、そこにこだわる人は多いんですよ。
- HIGEDARUMA
- 作者のakita11さんも、打ち心地のよいキーボードを、ずっと探していたそうなんです。
- BANNO
- それで、たどり着いたのがタイプライター?
- HIGEDARUMA
- はい。タイプライターは、キーを打つと、先に文字のはんこがついた金属の棒が跳ね上がって、紙を叩いて文字を写す機械なんです。
- BANNO
- パソコンが広まる前は、事務所で書類を打つのに使われていた道具ですね。
- HIGEDARUMA
- 作者はこう書いています。150年の歴史を経て、心地よい打鍵感を求めて進化をしてきたはずで、きっと最高の打鍵感を持っているに違いありません。
- BANNO
- なるほど!最高の打ち心地を、新しい製品じゃなくて、150年磨かれてきた道具に探しに行ったんですね。
- HIGEDARUMA
- そしてもう一つのこだわりが、機械の部分にはなるべく手を加えないこと。打ち心地を壊さないためなんです。
- BANNO
- 分解して中身をパソコンのキーボードに入れ替えたら、意味がないですもんね。
- BANNO
- でも、壊さずに、どうやってパソコンに、今エーを押しましたって伝えるんですか?
- HIGEDARUMA
- 鍵は、タイプライターの本体が金属でできていることなんです。
- HIGEDARUMA
- 先ほどの文字のはんこがついた金属の棒、ハンマーと呼びますね。このハンマーと本体は、金属どうしで電気がつながっているんですよ。
- BANNO
- 金属どうしだから、電気が通るんですね。
- HIGEDARUMA
- そこで、ハンマーの根元の出っ張りが当たる位置に、電気の通り道になる小さな接点を並べた板を、自分で設計したんです。
- HIGEDARUMA
- キーを押すとハンマーが動いて、その接点に触れる。すると電気が流れて、どのキーが押されたかが分かるんです。
- BANNO
- えっ、じゃあハンマーそのものが、スイッチになっているってことですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。新しいスイッチを足すんじゃなくて、もともと動いている部品を、そのままスイッチとして使っているんですよ。
- BANNO
- 理科の実験で、電線どうしが触れたら豆電球がつく、あれと同じ考え方ですね。
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。ただ、ハンマーはたくさん並んでいるので、接点の位置がずれると隣のキーと間違えてしまうんです。
- HIGEDARUMA
- そこで作者は、板の図面を紙に印刷して、実物に当てて何度も確かめたそうです。発表の資料には、0.1ミリ単位で位置合わせ、と書かれていました。
- BANNO
- 0.1ミリ!髪の毛くらいの細かさで合わせたんですね。
- BANNO
- それで、全部のキーが読めるようになったんですか?
- HIGEDARUMA
- ここで壁が二つありました。一つ目は、読み取る側の足りなさです。
- HIGEDARUMA
- 信号を読むのは、マイコンという小さなコンピューター。信号を受け取る足、ピンが、使える分で43本ありました。
- BANNO
- 43本もあれば、足りそうな気がしますけど。
- HIGEDARUMA
- それが、タイプライターのハンマーの数には足りなかったんです。
- HIGEDARUMA
- そこで、エンコーダという部品を1個足しました。少ない本数の線で、たくさんの入力を見分けるための部品なんです。
- BANNO
- 部品を一つ足して、足りない分を広げたんですね。
- HIGEDARUMA
- 二つ目の壁は、スペースと改行とシフトです。この三つは、押してもハンマーが出てこないんですよ。
- BANNO
- ハンマーが出ないと、さっきの接点には触れない、ということですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。だから改行とスペースは、光を当てて、跳ね返りで動きを読み取る小さなセンサーで、触れずに見張ることにしました。
- HIGEDARUMA
- シフトは、紙を押さえるローラーの部分が持ち上がるので、その動きを接触で読み取っています。
- BANNO
- ところで、タイプライターの改行って、どうやるんでしたっけ?
- HIGEDARUMA
- 行の終わりまで打ったら、横のレバーで、紙を巻いた台を行の頭まで戻して、次の行へ送るんです。これをキャリッジリターンと呼びます。
- HIGEDARUMA
- パソコンの改行キーをリターンキーと呼ぶのは、ここから来ているんですよ。
- BANNO
- じゃあこのキーボードは、パソコンで改行するのに、本物のレバーで紙を送るんですね!
- HIGEDARUMA
- そうなんです。最後に、USBでパソコンにつなぐ小さなマイコンを付けて、普通のキーボードとして認識されるようにしました。
- HIGEDARUMA
- 発表の資料には、タイプライターにUSBケーブルが生える違和感、とも書かれていました。
- BANNO
- 150年の歴史がある機械から、USBケーブル。たしかに、その組み合わせだけでわくわくしますね。
- BANNO
- この作品、ヒーローズ・リーグ2022で、運営チームからの特別賞をもらっています。
- HIGEDARUMA
- 講評では、なるべく機械を傷つけずに打鍵を読み取るこだわりに引き込まれ、キャリッジリターンの実装にやられました、と書かれていました。
- BANNO
- キャリッジリターンしてみたい!とも書いてありましたよ。気持ち、すごく分かります。
- HIGEDARUMA
- もう一つ、製品としての進化は度外視で、オレトクな欲求を形にした、とも評価されていたんです。
- BANNO
- オレトク、つまり、誰かに頼まれたんじゃなく、自分が欲しいから作る、ということですね。
- HIGEDARUMA
- ほかの人からも、面白いし、ふつうに使えて良さそう、というコメントが寄せられていました。
- BANNO
- 自分のこだわりを本気で形にすると、ちゃんと人にも刺さるんですね。
- HIGEDARUMA
- 決勝の発表の資料では、いったん、スペースや改行、USBの部分は製作中、と書いているんです。
- HIGEDARUMA
- そのあとに、ワンモアシング、として、その仕組みを紹介していたんですよ。
- BANNO
- 最後にとっておきを見せる、粋な発表ですね。
- HIGEDARUMA
- 使われている主な部品は、こちらです。
- HIGEDARUMA
- 機械はほぼそのままで、足したのは板一枚と、少しの部品とセンサー。それで、150年磨かれてきた道具が、今のパソコンとつながるんです。
- BANNO
- 作者は、akita11さんです。
- BANNO
- では、今日できる、いちばん小さな一歩です。
- BANNO
- まずは作品ページのデモ動画で、レバーを送ると画面の文字が改行される瞬間を、見てみてください。
- BANNO
- それから、おうちにある、手ざわりが好きな古い道具を、一つ思い浮かべてみてください。
- HIGEDARUMA
- それがパソコンにつながったら、何をしたいか。もう動いている部品を、そのままスイッチにできないか、考えてみてください。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、150年の打ち心地をパソコンに連れてきた、タイプライター・キーボードでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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