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電子部品の雑音でバンド演奏「EleMag Harmony」|モーター・フロッピー・リレーが楽器になる自作楽器
ProtoPedia の作品「EleMag Harmony」を2人のMCが初心者目線で紹介。リレーの「カチッ」、モーターの「ウィーン」。ふつうは消したい電子部品の雑音も、1秒に何百回という速さで鳴らせば音の高さを持った「音階」になります。モーターがメロディ、フロッピーディスクドライブがベース、リレーがドラム、そして電磁石で鳴らす「弦を弾かないエレキギター」。高専生のJinさんが2019年の思いつきから名前を3回変え、3年の停滞を越えて2023年に完成させた電子部品のバンドの仕組みと物語を紹介します。ヒーローズ・リーグ 2024 KOSEN賞受賞作。
チャプター
0:00オープニング0:20電子部品のノイズで音楽を奏でる0:58雑音が音になるしくみ2:07部品たちのバンド3:34システム構成4:53弦を弾かないギター6:344年越しの物語8:16開発素材9:04エンディング
文字起こし(84行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、EleMag Harmony。
- HIGEDARUMA
- モーターやスイッチみたいな電子部品が出す雑音で、音楽を演奏する自作の楽器なんです。
- BANNO
- えっ、雑音で音楽ですか?雑音って、うるさいだけの音ですよね。
- HIGEDARUMA
- そう思いますよね。作ったのは、高専、つまり高等専門学校の学生だったJinさん。その雑音を、ちゃんとバンドにしちゃったんですよ。
- BANNO
- でも、雑音がどうやって曲になるんでしょう。
- HIGEDARUMA
- まず、リレーという部品から説明しますね。電気で動くスイッチなんです。
- HIGEDARUMA
- 電気を流すと中のスイッチが切り替わって、カチッと鳴るんですよ。
- BANNO
- 家電のスイッチを入れたときの、あのカチッですね。
- HIGEDARUMA
- そうです。このカチッを、1秒に1回なら、ただのカチッ、カチッ。
- HIGEDARUMA
- でも1秒に何百回も鳴らすと、つながって、ブーンという高さのある音に聞こえるんです。
- BANNO
- へえ、カチッが速すぎて、ひとつの音につながるんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。しかも回数が多いほど高い音になります。例えば1秒に440回ゆれると、ドレミのラの音なんですよ。
- HIGEDARUMA
- Jinさん自身も、1秒に数百回の振動をスイッチで起こせば、その音階の音が鳴らせる、と書いているんです。
- BANNO
- じゃあ、1秒に何回鳴らすかを決められれば、ドレミが弾けちゃうってことですか?
- HIGEDARUMA
- まさにそこなんです。回数さえ操れば、動いて音が出る部品は、どれでも楽器になるんですよ。
- BANNO
- それで、どんな部品が演奏しているんですか?
- HIGEDARUMA
- パートは4つ。メロディ、ベース、ドラム、ギターです。普通のバンドと同じなんですよ。
- HIGEDARUMA
- メロディは、ステッピングモーター。少しずつ決まった角度だけ回る、プリンターなどに入っているモーターです。
- HIGEDARUMA
- これを細かく震わせて、その振動の音で歌わせているんです。
- BANNO
- モーターが歌うんですね。ベースは何でしょう?
- HIGEDARUMA
- ベースは、フロッピーディスクドライブ。昔のパソコンで、四角いディスクにデータを保存していた機械です。
- HIGEDARUMA
- 中の部品が動くときの響く低音が、ベースにぴったりなんですよ。
- BANNO
- 懐かしい!あの機械が、今はベーシストなんですね。
- HIGEDARUMA
- そしてドラムは、さっきのリレー。カチッという切り替わりの音そのものを、リズムに使っています。
- BANNO
- なるほど。じゃあ最後のギターは、何の部品なんですか?
- HIGEDARUMA
- ギターは、本物のエレキギターなんです。ただし、弾く人はいません。
- BANNO
- えっ、誰も弾かないのに鳴るんですか?
- HIGEDARUMA
- そこがこの作品いちばんの見どころなので、あとでじっくり話しますね。
- HIGEDARUMA
- ちなみに、音符の形をした板にはライトの列が付いていて、音の大きさに合わせて光るんですよ。
- BANNO
- 見た目も楽しいですね。展示で見たら、思わず足が止まりそうです。
- BANNO
- ひげだるまさん、この部品たちに、誰が楽譜を渡しているんですか?
- HIGEDARUMA
- スタートはパソコンです。Jinさんが自作したソフトが、MIDIというデータを読むんです。
- HIGEDARUMA
- MIDIは、どの音を、いつ鳴らすかが書いてある、曲の楽譜のデータですね。
- HIGEDARUMA
- ソフトがそこから音の高さを取り出して、ケーブルでマイコンに次々と送ります。
- BANNO
- マイコンって、何をする係なんですか?
- HIGEDARUMA
- 部品を動かすための小さなコンピュータです。今回はSTM32というものを使っています。
- HIGEDARUMA
- 届いた音を、モーターに、フロッピーにと振り分けて、1秒に何回オンオフするかの電気の合図を送るんです。
- BANNO
- パソコンが指揮者で、マイコンが楽団に合図を出す係なんですね。
- BANNO
- でも、楽器がたくさんあると、タイミングがズレたりしないんですか?
- HIGEDARUMA
- そこが一番の敵だったんです。最初に使ったマイコンは処理が遅くて、精度が足りなかったそうです。
- HIGEDARUMA
- だからSTM32に乗り換えて、さらにデータを送る速さも限界まで上げた。上げないと、曲のテンポが遅れてしまうんですよ。
- BANNO
- なるほど。ズレない演奏の裏に、そんな地道な工夫があるんですね。
- BANNO
- さあ、お待ちかねのギターです。誰も弾かないのに、どうして鳴るんですか?
- HIGEDARUMA
- まず、エレキギターの仕組みからいきますね。弦の下に、ピックアップという部品があるんです。
- HIGEDARUMA
- 磁石とコイルでできていて、弦の揺れを電気の信号に変える、マイクみたいなものですね。
- HIGEDARUMA
- その信号をアンプで大きくして、スピーカーから鳴らす。これが普通のエレキギターです。
- BANNO
- じゃあ、やっぱり誰かが弦を揺らさないと、鳴らないですよね。
- HIGEDARUMA
- そこでJinさんは考えました。弦を揺らす代わりに、電磁石で、磁石の力そのものを揺らしたらどうだろう、と。
- HIGEDARUMA
- 使ったのはソレノイド。電気を流すと、中の鉄の芯が動く電磁石です。
- HIGEDARUMA
- 本当は、その磁石の力で弦を震わせるつもりだったんです。ところが実験してみると、弦は震えなかった。
- BANNO
- えっ、失敗ですか?
- HIGEDARUMA
- それが、弦は動かないのに、ピックアップが磁石の揺れを直接拾って、ちゃんと音が鳴ったんですよ。
- HIGEDARUMA
- Jinさんは当時、これもこれでヨシ、と書いて、そのまま採用しちゃったんです。
- BANNO
- 狙いどおりじゃなくても、鳴ったならオッケー。その割り切り、すごくいいですね。
- HIGEDARUMA
- 6本の弦の分、6個のソレノイドを、3Dプリンターで作った台でピックアップの真上に並べています。
- HIGEDARUMA
- しかもこのギター自体、Jinさんの同級生がキットで手作りしたものなんですよ。
- BANNO
- 手作りのギターを、手作りの仕掛けが弾いている。なんだか胸が熱くなりますね。
- BANNO
- ここまで作るのって、相当時間がかかったんじゃないですか?
- HIGEDARUMA
- 始まりは2019年、Jinさんが高専の2年生のときです。
- HIGEDARUMA
- フロッピーで演奏する、設計が公開されたプロジェクトに憧れて、手元にあったリレーで演奏できないかと考えたんです。
- HIGEDARUMA
- 名前はMusic Relay。その年の高専祭に出しました。
- BANNO
- 最初は、リレーだけの楽器だったんですね。
- HIGEDARUMA
- 翌年の2020年には、同級生の手作りギターと合わせる企画に広げて、Dream Electric Orchestraと名前を変えます。
- HIGEDARUMA
- ところが、ギターの自動演奏とタイミングのズレで行き詰まって、そこから3年、うまく進まなかったんです。
- BANNO
- 3年ですか。私なら、途中で諦めちゃいそうです。
- HIGEDARUMA
- そこを越えたのが、さっきの電磁石のひらめきと、ソフトの改良でした。
- HIGEDARUMA
- オーケストラではないし、電磁石で鳴らしている。そこで名前をEleMag Harmonyに変えて、2023年に完成させたんです。
- BANNO
- 名前を3回変えて、4年。粘り勝ちですね。
- BANNO
- そして、ヒーローズ・リーグ2024では、KOSEN賞を受賞しています。
- HIGEDARUMA
- 講評では、本来楽器ではない身の回りの電気機器で楽器を作る、斬新なアイデアと完成度が評価されています。
- BANNO
- 生で聞いてみたい、という言葉もありました。私も同じ気持ちです。
- HIGEDARUMA
- 設計のデータやプログラムは、GitHubで公開されているんです。同じ個人開発者として、この気前のよさはうれしいですね。
- HIGEDARUMA
- 使われている道具は、こちらです。
- HIGEDARUMA
- どれも特別な楽器じゃない、身の回りにある部品ばかり。そこがいいんですよね。
- BANNO
- 作者は、Jinさん。
- BANNO
- では、今日できる、いちばん小さな一歩です。
- BANNO
- まずは今日、家の中でカチッと鳴るものを、ひとつ探して耳をすませてみてください。
- HIGEDARUMA
- もっと知りたくなったら、Jinさんのサイトの解説記事を1本。リレーで音を鳴らすところから、順番に書いてありますよ。
- BANNO
- うるさいだけだと思っていた音が、明日から少し違って聞こえそうですね。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、電子部品の雑音で音楽を奏でる、EleMag Harmonyでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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