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電子部品の雑音でバンド演奏「EleMag Harmony」|モーター・フロッピー・リレーが楽器になる自作楽器

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EleMag Harmony

    3分版をリクエスト(作者キット)

    ProtoPedia の作品「EleMag Harmony」を2人のMCが初心者目線で紹介。リレーの「カチッ」、モーターの「ウィーン」。ふつうは消したい電子部品の雑音も、1秒に何百回という速さで鳴らせば音の高さを持った「音階」になります。モーターがメロディ、フロッピーディスクドライブがベース、リレーがドラム、そして電磁石で鳴らす「弦を弾かないエレキギター」。高専生のJinさんが2019年の思いつきから名前を3回変え、3年の停滞を越えて2023年に完成させた電子部品のバンドの仕組みと物語を紹介します。ヒーローズ・リーグ 2024 KOSEN賞受賞作。

    チャプター

    文字起こし(84行)
    BANNO
    ゆっくりばんのです。
    HIGEDARUMA
    ゆっくりひげだるまです。
    BANNO
    今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
    HIGEDARUMA
    今日紹介するのは、EleMag Harmony。
    HIGEDARUMA
    モーターやスイッチみたいな電子部品が出す雑音で、音楽を演奏する自作の楽器なんです。
    BANNO
    えっ、雑音で音楽ですか?雑音って、うるさいだけの音ですよね。
    HIGEDARUMA
    そう思いますよね。作ったのは、高専、つまり高等専門学校の学生だったJinさん。その雑音を、ちゃんとバンドにしちゃったんですよ。
    BANNO
    でも、雑音がどうやって曲になるんでしょう。
    HIGEDARUMA
    まず、リレーという部品から説明しますね。電気で動くスイッチなんです。
    HIGEDARUMA
    電気を流すと中のスイッチが切り替わって、カチッと鳴るんですよ。
    BANNO
    家電のスイッチを入れたときの、あのカチッですね。
    HIGEDARUMA
    そうです。このカチッを、1秒に1回なら、ただのカチッ、カチッ。
    HIGEDARUMA
    でも1秒に何百回も鳴らすと、つながって、ブーンという高さのある音に聞こえるんです。
    BANNO
    へえ、カチッが速すぎて、ひとつの音につながるんですね。
    HIGEDARUMA
    はい。しかも回数が多いほど高い音になります。例えば1秒に440回ゆれると、ドレミのラの音なんですよ。
    HIGEDARUMA
    Jinさん自身も、1秒に数百回の振動をスイッチで起こせば、その音階の音が鳴らせる、と書いているんです。
    BANNO
    じゃあ、1秒に何回鳴らすかを決められれば、ドレミが弾けちゃうってことですか?
    HIGEDARUMA
    まさにそこなんです。回数さえ操れば、動いて音が出る部品は、どれでも楽器になるんですよ。
    BANNO
    それで、どんな部品が演奏しているんですか?
    HIGEDARUMA
    パートは4つ。メロディ、ベース、ドラム、ギターです。普通のバンドと同じなんですよ。
    HIGEDARUMA
    メロディは、ステッピングモーター。少しずつ決まった角度だけ回る、プリンターなどに入っているモーターです。
    HIGEDARUMA
    これを細かく震わせて、その振動の音で歌わせているんです。
    BANNO
    モーターが歌うんですね。ベースは何でしょう?
    HIGEDARUMA
    ベースは、フロッピーディスクドライブ。昔のパソコンで、四角いディスクにデータを保存していた機械です。
    HIGEDARUMA
    中の部品が動くときの響く低音が、ベースにぴったりなんですよ。
    BANNO
    懐かしい!あの機械が、今はベーシストなんですね。
    HIGEDARUMA
    そしてドラムは、さっきのリレー。カチッという切り替わりの音そのものを、リズムに使っています。
    BANNO
    なるほど。じゃあ最後のギターは、何の部品なんですか?
    HIGEDARUMA
    ギターは、本物のエレキギターなんです。ただし、弾く人はいません。
    BANNO
    えっ、誰も弾かないのに鳴るんですか?
    HIGEDARUMA
    そこがこの作品いちばんの見どころなので、あとでじっくり話しますね。
    HIGEDARUMA
    ちなみに、音符の形をした板にはライトの列が付いていて、音の大きさに合わせて光るんですよ。
    BANNO
    見た目も楽しいですね。展示で見たら、思わず足が止まりそうです。
    BANNO
    ひげだるまさん、この部品たちに、誰が楽譜を渡しているんですか?
    HIGEDARUMA
    スタートはパソコンです。Jinさんが自作したソフトが、MIDIというデータを読むんです。
    HIGEDARUMA
    MIDIは、どの音を、いつ鳴らすかが書いてある、曲の楽譜のデータですね。
    HIGEDARUMA
    ソフトがそこから音の高さを取り出して、ケーブルでマイコンに次々と送ります。
    BANNO
    マイコンって、何をする係なんですか?
    HIGEDARUMA
    部品を動かすための小さなコンピュータです。今回はSTM32というものを使っています。
    HIGEDARUMA
    届いた音を、モーターに、フロッピーにと振り分けて、1秒に何回オンオフするかの電気の合図を送るんです。
    BANNO
    パソコンが指揮者で、マイコンが楽団に合図を出す係なんですね。
    BANNO
    でも、楽器がたくさんあると、タイミングがズレたりしないんですか?
    HIGEDARUMA
    そこが一番の敵だったんです。最初に使ったマイコンは処理が遅くて、精度が足りなかったそうです。
    HIGEDARUMA
    だからSTM32に乗り換えて、さらにデータを送る速さも限界まで上げた。上げないと、曲のテンポが遅れてしまうんですよ。
    BANNO
    なるほど。ズレない演奏の裏に、そんな地道な工夫があるんですね。
    BANNO
    さあ、お待ちかねのギターです。誰も弾かないのに、どうして鳴るんですか?
    HIGEDARUMA
    まず、エレキギターの仕組みからいきますね。弦の下に、ピックアップという部品があるんです。
    HIGEDARUMA
    磁石とコイルでできていて、弦の揺れを電気の信号に変える、マイクみたいなものですね。
    HIGEDARUMA
    その信号をアンプで大きくして、スピーカーから鳴らす。これが普通のエレキギターです。
    BANNO
    じゃあ、やっぱり誰かが弦を揺らさないと、鳴らないですよね。
    HIGEDARUMA
    そこでJinさんは考えました。弦を揺らす代わりに、電磁石で、磁石の力そのものを揺らしたらどうだろう、と。
    HIGEDARUMA
    使ったのはソレノイド。電気を流すと、中の鉄の芯が動く電磁石です。
    HIGEDARUMA
    本当は、その磁石の力で弦を震わせるつもりだったんです。ところが実験してみると、弦は震えなかった。
    BANNO
    えっ、失敗ですか?
    HIGEDARUMA
    それが、弦は動かないのに、ピックアップが磁石の揺れを直接拾って、ちゃんと音が鳴ったんですよ。
    HIGEDARUMA
    Jinさんは当時、これもこれでヨシ、と書いて、そのまま採用しちゃったんです。
    BANNO
    狙いどおりじゃなくても、鳴ったならオッケー。その割り切り、すごくいいですね。
    HIGEDARUMA
    6本の弦の分、6個のソレノイドを、3Dプリンターで作った台でピックアップの真上に並べています。
    HIGEDARUMA
    しかもこのギター自体、Jinさんの同級生がキットで手作りしたものなんですよ。
    BANNO
    手作りのギターを、手作りの仕掛けが弾いている。なんだか胸が熱くなりますね。
    BANNO
    ここまで作るのって、相当時間がかかったんじゃないですか?
    HIGEDARUMA
    始まりは2019年、Jinさんが高専の2年生のときです。
    HIGEDARUMA
    フロッピーで演奏する、設計が公開されたプロジェクトに憧れて、手元にあったリレーで演奏できないかと考えたんです。
    HIGEDARUMA
    名前はMusic Relay。その年の高専祭に出しました。
    BANNO
    最初は、リレーだけの楽器だったんですね。
    HIGEDARUMA
    翌年の2020年には、同級生の手作りギターと合わせる企画に広げて、Dream Electric Orchestraと名前を変えます。
    HIGEDARUMA
    ところが、ギターの自動演奏とタイミングのズレで行き詰まって、そこから3年、うまく進まなかったんです。
    BANNO
    3年ですか。私なら、途中で諦めちゃいそうです。
    HIGEDARUMA
    そこを越えたのが、さっきの電磁石のひらめきと、ソフトの改良でした。
    HIGEDARUMA
    オーケストラではないし、電磁石で鳴らしている。そこで名前をEleMag Harmonyに変えて、2023年に完成させたんです。
    BANNO
    名前を3回変えて、4年。粘り勝ちですね。
    BANNO
    そして、ヒーローズ・リーグ2024では、KOSEN賞を受賞しています。
    HIGEDARUMA
    講評では、本来楽器ではない身の回りの電気機器で楽器を作る、斬新なアイデアと完成度が評価されています。
    BANNO
    生で聞いてみたい、という言葉もありました。私も同じ気持ちです。
    HIGEDARUMA
    設計のデータやプログラムは、GitHubで公開されているんです。同じ個人開発者として、この気前のよさはうれしいですね。
    HIGEDARUMA
    使われている道具は、こちらです。
    HIGEDARUMA
    どれも特別な楽器じゃない、身の回りにある部品ばかり。そこがいいんですよね。
    BANNO
    作者は、Jinさん。
    BANNO
    では、今日できる、いちばん小さな一歩です。
    BANNO
    まずは今日、家の中でカチッと鳴るものを、ひとつ探して耳をすませてみてください。
    HIGEDARUMA
    もっと知りたくなったら、Jinさんのサイトの解説記事を1本。リレーで音を鳴らすところから、順番に書いてありますよ。
    BANNO
    うるさいだけだと思っていた音が、明日から少し違って聞こえそうですね。
    BANNO
    さて、今日紹介したのは、電子部品の雑音で音楽を奏でる、EleMag Harmonyでした。
    HIGEDARUMA
    次回の作品でも、ゆっくりしていってね。

    クレジット

    紹介した作品
    EleMag Harmony
    作者: Jin
    ライセンス: CC BY 4.0
    ※作品の画像・動画は、紹介のために切り抜き・編集して使用しています。
    声
    BANNO さんと HIGEDARUMA さんの録音をもとにした合成音声です。

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