熱を出した夜、機械の方から電話がくる「電言 - Dengon -」|一人暮らしを見守るサービス
ProtoPedia の作品「電言 - Dengon -」を2人のMCが初心者目線で紹介。一人暮らしで熱を出しても「こんなことで助けを呼ぶのは情けない」と我慢してしまう。電言は、小さな体温計(M5StickC)と Apple Watch が異変に気づくと、Twilio から自動で「体調を心配する電話」をかけ、出なければ kintone に記録が残って不動産会社が駆けつけられる見守りサービスです。体温38℃以上・心拍50以下/120以上のルール、ボタン1つの SOS、用件を一緒に渡す工夫、不動産会社と組むビジネスモデルまで。作者 おいし もとき さんが1人で作り、Twilioオンラインコンテスト2021 グランドチャンピオンなど5つの賞を受賞。
チャプター
文字起こし(86行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、電言 - Dengon -。一人暮らしの人を見守るサービスです。
- BANNO
- 見守りサービスですか。お年寄り向けのものは、聞いたことがありますね。
- HIGEDARUMA
- それが、この作品は、若い一人暮らしの人にも目を向けているんです。
- BANNO
- 作ったのは、おいし もときさん。たった1人で、全部作ったそうですよ。
- BANNO
- みなさん、一人暮らしで熱を出した夜って、経験ありませんか?
- HIGEDARUMA
- ありますね。頭はぼーっとするし、飲み物を買いに行くのもしんどいんですよ。
- BANNO
- そういうとき、誰かに連絡できますか?
- HIGEDARUMA
- 正直、しないかもしれません。こんなことで呼ぶのは悪いかな、って。
- BANNO
- ですよね。作者のスライドにも、まさにその気持ちが描かれているんですよ。
- BANNO
- スライドの吹き出しには、こうあります。つらいなぁ、こんなことで助けを呼ぶのは情けないよなぁ。自分は若いから我慢できる。
- HIGEDARUMA
- わかります。家族と住んでいれば、顔色が悪いよって、誰かが気づいてくれるんですけどね。
- BANNO
- 作者のおいしさん自身も、独身のころ、体調の不安が多かったそうです。
- BANNO
- 近くに頼れる人がいなくて、家族に言うのも気が引けた。その時代を思い出して作った、と書いています。
- HIGEDARUMA
- 自分の困りごとが出発点なんですね。個人開発らしくて、いいなあ。
- BANNO
- しかも調べてみると、見守りサービスって、お年寄り向けはたくさんあるんです。
- BANNO
- 郵便局が訪ねてくれるものや、警備会社のもの、家電メーカーのものまで。
- HIGEDARUMA
- でも、若い人向けは見当たらない、と。
- BANNO
- そうなんです。部屋を貸している不動産会社と組んだものや、数日だけ使える短い契約のものも無かったんですって。
- HIGEDARUMA
- 熱が出た数日だけ見守ってほしい、という使い方ですね。たしかに欲しいかも。
- BANNO
- 部屋を貸す不動産会社の側にも、困りごとがあります。ふだんの管理の仕事では、住む人の異変に早く気づくのが難しいんです。
- HIGEDARUMA
- 住む人も、貸す人も、早く気づきたい。そこをつなぐのが、電言なんですね。
- BANNO
- じゃあ、電言を使うと、熱を出した夜はどう変わるんですか?
- HIGEDARUMA
- 順番に説明しますね。まず、部屋には小さな体温計を置いておきます。
- HIGEDARUMA
- M5StickCという、指でつまめるくらいの小さなコンピュータに、触れずに温度を測るセンサーを付けたものなんです。
- BANNO
- 触れずに測れるなら、具合が悪くても、さっと使えますね。
- HIGEDARUMA
- 測った体温が38度以上だと、自動でスマホに電話がかかってくるんです。
- BANNO
- えっ、機械の方から電話をくれるんですか!
- HIGEDARUMA
- そうなんです。体調を心配する電話が、向こうからかかってくるんですよ。
- BANNO
- 自分から助けてって言わなくていいのが、すごく大きいですね。
- HIGEDARUMA
- もし電話に出られなかったら、電話に出なかった、という記録が残ります。
- HIGEDARUMA
- その記録を見て、不動産会社の担当者が、もう一度電話したり、部屋に駆けつけたりできるんです。
- BANNO
- 電話に出られないくらい、具合が悪いのかもしれませんもんね。
- HIGEDARUMA
- 体温計だけじゃありません。アップルウォッチを付けておけば、心拍数も見てくれます。
- HIGEDARUMA
- 心拍数が50以下か、120以上になったら、同じように自動で電話がかかるんです。
- BANNO
- 心臓の動きがゆっくりすぎても、速すぎても、ということですね。
- HIGEDARUMA
- はい。血液の中の酸素の量、血中酸素レベルも測っていて、80パーセント以下なら記録に残します。
- BANNO
- それと、どうしてもつらいときのボタンもあるんですよね?
- HIGEDARUMA
- はい。さっきの小さな体温計のボタンを押すと、不動産会社にSOSの電話が届きます。
- BANNO
- 声を出す元気がなくても、押すだけでいい。やさしい仕組みですね。
- BANNO
- でも、電話をかけたり記録を残したり、裏側はどうなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- システム構成を見てみましょう。登場するのは、大きく4つです。
- HIGEDARUMA
- 体温計と腕時計が測った数字を、インターネットの上の司令塔に送ります。IBM Cloudというサービスです。
- HIGEDARUMA
- 司令塔が、38度以上だなと判断したら、Twilioに、この人に電話して、と頼むんです。
- BANNO
- Twilioって、何ですか?
- HIGEDARUMA
- プログラムから電話をかけられるサービスです。人の代わりに電話をかけて、出たか出なかったかも教えてくれるんですよ。
- BANNO
- 記録の方は、どうしているんですか?
- HIGEDARUMA
- kintoneという、記録をためて画面で見られる、台帳のようなサービスを使っています。
- HIGEDARUMA
- 不動産会社の人は、この画面で様子を確かめて、誰がどう対応したかを書き込むんです。
- BANNO
- なるほど。測る、判断する、電話する、記録する。役割を分けているんですね。
- HIGEDARUMA
- 作り手として面白いのが、電話を頼むときの工夫なんです。
- HIGEDARUMA
- 誰に、だけでなく、熱なのか、心拍なのか、SOSなのか、という用件も一緒に渡しているんですよ。
- BANNO
- それで、何がうれしいんですか?
- HIGEDARUMA
- 電話の結果が戻ってきたとき、どの用件の電話に出なかったのかが、すぐ分かるんです。作者も、ここがミソだと書いています。
- BANNO
- 熱の電話なのか、SOSの電話なのかで、急ぎ具合が全然違いますもんね。
- HIGEDARUMA
- もう1つ、利用者ごとに専用の電話番号を貸し出しているんです。
- HIGEDARUMA
- その番号からかかってくれば、不動産会社は、すぐに誰からの電話か分かるんですよ。
- BANNO
- 名乗る元気がなくても、誰か分かる。これも助かりますね。
- HIGEDARUMA
- 使った素材は、こちらです。
- HIGEDARUMA
- アップルウォッチのアプリは、Xcodeで自分で作っています。小さなコンピュータから腕時計、電話、台帳まで、ぜんぶ1人なんです。
- BANNO
- これを1人で!?
- HIGEDARUMA
- はい。作品ページの構成図を見ると、その量にびっくりしますよ。
- BANNO
- ビジネスとして見ても、うまいなと思ったところがあるんです。
- BANNO
- 不動産会社には、もともと部屋のトラブルに対応するサポートの仕事がありますよね。それを見守りに使う想定なんです。
- HIGEDARUMA
- たとえば水漏れで駆けつけるような仕組みを、体調の見守りにも生かすわけですね。
- BANNO
- はい。体温計は貸し出して、不動産会社の管理部門の人がすぐ届ける。料金は、見守りの料金と、駆けつけたときだけの料金です。
- BANNO
- 駆けつけは30分までは無料、みたいなアイデアも書かれていました。
- HIGEDARUMA
- 住む人は安心が手に入って、貸す人は早く気づける。両方にいい話なんですね。
- BANNO
- 審査員からも、不動産会社と組むところが、ビジネスモデルとして優れている、と評価されたそうですよ。
- BANNO
- その審査の結果が、すごいんです。
- BANNO
- Twilioオンラインコンテスト2021で、グランドチャンピオン。さらに、9月のTwilio賞。
- HIGEDARUMA
- ヒーローズ・リーグ 2021では、kintone賞、Joboco賞、HLロス賞と、3つも受賞しているんです。
- BANNO
- HLロス賞って、変わった名前ですね。
- HIGEDARUMA
- 講評がいいんですよ。一人でこれだけの量を作り込んでいて、明らかに燃え尽きているだろう、と。
- BANNO
- ねぎらいの賞なんですね。それだけ作り込まれていた、と。
- HIGEDARUMA
- Twilio賞の講評でも、5分ではとても紹介しきれない、と言われていました。同じ個人開発者として、本当に頭が下がります。
- BANNO
- おいしさんは、前の年にも、ぼっち予約という、電話1本で一人席を取れる作品を作っているんです。
- BANNO
- 作品ページには、結局、ぼっち系のネタになってしまいました、と書いていて。
- HIGEDARUMA
- 一人でいる人を助けたい、という気持ちが、ずっとつながっているんですね。
- BANNO
- 今日できる、いちばん小さな一歩です。
- BANNO
- 体調を崩したとき、誰に連絡するか。1人だけ、今日決めておいてください。その人に一言伝えておくと、もっと安心です。
- HIGEDARUMA
- 作ってみたい人は、作品ページのシステム構成図をのぞいてみてください。電話をかけるプログラムも、小さなコンピュータも、思ったより身近に始められますよ。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、熱を出した夜に、機械の方から電話をくれる見守りサービス、電言 - Dengon - でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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