時刻の数字が、水に溶けて消える時計「X(r/n)os」|秒針のかわりに水面の波紋
ProtoPedia の作品「X(r/n)os」を2人のMCが初心者目線で紹介。水槽の上に吊った透明なアクリルの棒を上げ下げして空中に時刻を描き、いらなくなった線は水に沈んで消える。秒は、振動モーターとライトで作る水面の波紋で表す電気仕掛けの時計です。途切れず流れる時間と、数字でしか時をつかめない私たち。そんな作者の問いを、時計専用の部品・ステッピングモーター・振動モーター・Arduino という定番部品の組み合わせで形にした仕組みと、東京大学制作展からアジアデジタルアート大賞展 FUKUOKA 入賞までの歩みまで。
チャプター
文字起こし(72行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、X(r/n)os。
- BANNO
- 時刻の数字が、水に溶けて消える時計?どういうことでしょう。
- HIGEDARUMA
- 透明な棒を吊って、空中に時刻の数字を描くんです。
- HIGEDARUMA
- その数字が、下の水に沈むと消える。そういう、アートの時計なんですよ。
- BANNO
- まずは写真を見てみましょう。これ、どこを見ればいいんですか?
- HIGEDARUMA
- 上から順に見ていきますね。いちばん上の棚に、黄色い滑車とモーターがずらっと並んでいます。
- HIGEDARUMA
- その下の空中に、15:35という時刻が浮かんでいますよね。そして、いちばん下が水槽です。
- BANNO
- ほんとだ。数字が、宙に浮いているように見えますね。
- HIGEDARUMA
- この数字の線は、透明なアクリルの棒なんです。ひもで吊って、上げたり下げたりしています。
- HIGEDARUMA
- 電卓の数字と同じで、7本の線を組み合わせて、1つの数字を作っているんですよ。
- BANNO
- じゃあ、時刻が変わったら、どうなるんですか?
- HIGEDARUMA
- いらなくなった線の棒が、するすると下りて、水槽の水に入るんです。水に浸かった棒は、すっと見えなくなる。
- BANNO
- 数字が水に溶けていくように見えるわけですね。
- BANNO
- あれ、でも時計なのに、秒針が見当たらないですね。
- HIGEDARUMA
- いいところに気づきましたね。秒は、水面の波紋で表しているんです。
- BANNO
- 針でも数字でもなく、波紋で秒。なんだか詩みたいですね。
- HIGEDARUMA
- 大きさは、幅85センチ、高さ80センチ。机に置く大きめの水槽くらいです。
- BANNO
- でも、どうして数字を水に沈めようと思ったんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 作者は、作品のストーリーにこう書いています。
- HIGEDARUMA
- 時は、途切れずに流れている。なのに人は、時刻という区切られた数字でしか、時をつかめない。
- HIGEDARUMA
- 時計は、流れている時から、数字を取り出す装置だ、と。
- BANNO
- 流れと、数字。うーん、もう少しかみ砕くと?
- HIGEDARUMA
- この作品では、途切れない流れが水、区切られた数字がアクリルの棒です。
- BANNO
- あ、分かってきました。楽しい1時間はあっという間で、待ち合わせの5分は長く感じますよね。
- BANNO
- でも時計の数字は、どちらも同じ。本当の時間の感じ方は、数字に入りきらないんですね。
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。だから数字の棒が水に浸かって、すっと消える瞬間がある。
- HIGEDARUMA
- 作者はその現象に、時の一部しかつかめない、人間のさがを感じる、と書いています。
- BANNO
- 時計なのに、時計を疑っている作品なんですね。じっと見ていたくなります。
- BANNO
- ひげだるまさん、裏側はどうなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- 作品ページには、3つの段階が書かれています。順番に見ていきますね。
- HIGEDARUMA
- 1つ目は、時刻を知る部品です。リアルタイムクロックICという、時計専用の小さな部品なんです。
- HIGEDARUMA
- 腕時計の中身のようなもので、電源を切っても、時刻を数え続けてくれるんですよ。
- BANNO
- 2つ目は、あの棒を動かすところですね。
- HIGEDARUMA
- はい。ステッピングモーターという、決まった角度ずつ、カチッ、カチッと正確に回るモーターを使います。
- HIGEDARUMA
- モーターが滑車を回すと、ひもが巻き取られて、棒が上がる。逆に回すと、下がるんです。
- BANNO
- 写真の黄色い輪っかが、その滑車なんですね。こんなにたくさん並んでいるんだ。
- HIGEDARUMA
- 1つの数字に7本、それが4桁分。たくさんの棒を、ずらりと並んだ滑車とモーターで動かしているんです。
- HIGEDARUMA
- 棒を1本ずつ、狙った高さでぴたっと止める。ここが腕の見せどころなんですよ。
- BANNO
- 3つ目が、秒の波紋ですね。どうやって水を揺らすんですか?
- HIGEDARUMA
- スマホのブルブルと同じ、振動モーターです。それで水面を揺らして、上からスポットライトを当てる。
- HIGEDARUMA
- すると、光った波紋が、静かに広がって見えるんです。
- BANNO
- スマホの部品で、秒針が作れちゃうんですね。
- HIGEDARUMA
- 全体のまとめ役は、Arduinoです。電子工作の入門で定番の、小さなコンピューターの基板ですね。
- BANNO
- うわ、裏側は配線がびっしり。表の静けさとのギャップがすごいですね。
- BANNO
- 見た人の反応も、プロトペディアのコメントに残っていますよ。
- BANNO
- ずっと見ちゃう。時が溶けていくような、不思議な感覚。駅前とかに置いて欲しい。
- HIGEDARUMA
- 子どものころ、パタパタ時計の中身の動きを、何時間も眺めていたのを思い出した、という声もありました。
- BANNO
- 分かります。動く仕掛けって、ずっと見ていられますよね。
- BANNO
- この作品は、どこで発表されたんですか?
- HIGEDARUMA
- 最初は2017年、東京大学の制作展です。作者の一人は、当時、大学院の研究室にいたそうです。
- HIGEDARUMA
- そのあと、アジアデジタルアート大賞展 FUKUOKAの、インタラクティブアート部門で入賞しました。
- HIGEDARUMA
- 2019年には、福岡アジア美術館に並んでいます。
- BANNO
- 美術館ですか!電子工作が、そのままアートとして飾られたんですね。
- HIGEDARUMA
- 作家のページによると、海外のアートの賞でも、2つでファイナリストに選ばれているんです。
- BANNO
- 作者は、戸田光紀さん。ユニットの名前で、作品を発表しています。
- HIGEDARUMA
- プロトペディアには2020年に登録されて、ヒーローズ・リーグ オンライン2020にも参加しています。
- BANNO
- プロトペディアの配信番組でも、2回取り上げられているんですね。
- BANNO
- ひげだるまさん、エンジニアとして、この作品のどこにぐっときました?
- HIGEDARUMA
- 使っている部品は、時計の部品、モーター、スマホのブルブル、ライト、そしてArduino。
- HIGEDARUMA
- どれも、電子工作ではおなじみの定番部品なんです。
- HIGEDARUMA
- すごいのは、それを水と組み合わせて、問いのある作品にしたこと。発想しだいで、ここまで行けるんですよ。
- BANNO
- 特別な部品じゃなくても、美術館に届くんですね。勇気が出ます。
- BANNO
- では、今日できる、いちばん小さな一歩です。
- BANNO
- まずは作品ページのデモ動画で、数字が水に溶ける瞬間を見てみてください。
- HIGEDARUMA
- 作ってみたくなったら、Arduinoとモーターを1個ずつ用意してみてください。
- HIGEDARUMA
- ひもを巻いて、消しゴムを上げ下げする。それだけでも、この作品の第一歩なんですよ。
- BANNO
- 部屋の時計も、今日はちょっと違って見えそうです。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、時刻の数字が水に溶けて消える時計、X(r/n)osでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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