かぶると後ろまで見える「U-HMD」|馬の目で世界を見るヘッドマウントディスプレイ
ProtoPedia の作品「U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜」を2人のMCが初心者目線で紹介。185度の魚眼カメラ2台を馬の頭の左右に付け、人間の視野を320度まで広げます。カメラ・画面・小型PC・バッテリーをすべて頭の中に収め、PCの熱は鼻の穴から排熱。12パーツに分けた3Dプリントの造形や、11人の体験実験の正直な結果まで。ヒーローズ・リーグ2024 MAヒーローほか3賞。
チャプター
0:00オープニング0:20馬の目で、世界を見る1:05馬の目は、頭の横に付いている2:16主役は、魚眼カメラ4:583D設計して、3Dプリント6:2412人がかぶって試した8:31すべてが高い精度でぶっ飛んでいる9:54エンディング
文字起こし(95行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜。
- BANNO
- えっ、写真の人、白い馬の頭をかぶっていますよ!
- HIGEDARUMA
- そうなんです。これをかぶると、馬の目から見た世界を体験できるんです。
- BANNO
- 馬の目から見た世界、ですか。人間とそんなに違うんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- 全然違うんですよ。なんと、自分の真横や後ろの方まで、一度に見えてしまうんです。
- BANNO
- 後ろまで!それはちょっと、かぶってみたいですね。
- BANNO
- そもそも、馬の目って、どうなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- 人間の目は、顔の正面に2つ並んでいますよね。だから、見えるのは主に前の方です。
- HIGEDARUMA
- 馬の目は、頭の左右の横側に付いているんです。
- BANNO
- たしかに、馬の顔って、目が横の方にありますね。
- HIGEDARUMA
- 見える範囲を角度で表すと、ぐるっと一周が360度。馬は、そのうち350度ほどが見えるといわれています。
- BANNO
- 350度ということは、見えないのは、ほんの少しだけですか?
- HIGEDARUMA
- はい。見えないのは、真後ろの10度くらいだけ。ほぼ全部が見えるパノラマなんです。
- BANNO
- そんな世界、想像もつきません。
- HIGEDARUMA
- そこでこの作品です。かぶると、見える範囲が320度まで広がります。
- BANNO
- 馬の350度に、かなり近づいていますね!
- HIGEDARUMA
- 作者さんは、作品ページにこう書いています。たまには、人間的な視点を捨ててみましょう。
- BANNO
- いい言葉ですね。いつもと違う目で、世界を見てみよう、ということですね。
- BANNO
- でも、どうやって人間の目で、後ろまで見えるようにしているんですか?
- HIGEDARUMA
- 主役は、魚眼カメラです。魚の目のように、ふつうのカメラよりずっと広い範囲を1枚に写せるカメラなんです。
- HIGEDARUMA
- 使っているのは、1台で185度まで写せる魚眼カメラ。それを馬の頭の左右に1台ずつ付けています。
- BANNO
- 185度というと、1台で、前から真横の少し後ろまで写る、ということですか?
- HIGEDARUMA
- そのとおりです。しかも2台とも、少しだけ内側に、22.5度傾けて付けているんです。
- BANNO
- わざわざ内側に向けるのは、なぜなんですか?
- HIGEDARUMA
- 正面を、左右両方のカメラで見られるようにするためです。両目で見える範囲が50度できます。
- HIGEDARUMA
- 残りの左右は、それぞれ片方のカメラだけで見る。合わせて320度、というわけなんです。
- BANNO
- まさに、馬の目の付き方を、カメラでまねしているんですね。
- BANNO
- 画面は、よくあるVRゴーグルを使っているんですか?
- HIGEDARUMA
- そこがこだわりで、既製のVRゴーグルは使っていないんです。
- HIGEDARUMA
- 海外の通販で買った、左右に分かれた小さな液晶画面を、馬の頭の中に組み込んでいます。
- BANNO
- 自分で組むと、何がいいんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 形を自由に決められて、軽くできるんです。全体で、重さは1キロほどに収まっています。
- BANNO
- 1キロというと、1リットルの牛乳パック1本分くらいですね。
- HIGEDARUMA
- カメラの映像は、手のひらサイズのパソコンで処理して、画面に映しています。
- HIGEDARUMA
- プログラムは、Pythonというプログラミング言語と、画像を扱うための定番の道具箱、OpenCVです。
- BANNO
- パソコンまで、頭の上に載っているんですか?
- HIGEDARUMA
- はい。カメラも、画面も、パソコンも、バッテリーも、全部が馬の頭の中に入っているんです。
- HIGEDARUMA
- かぶって歩き回る前提なので、線を引きずらないように、とこだわったそうです。
- BANNO
- それなら、展示会場でも気軽に歩けますね。電池は、どれくらいもつんですか?
- HIGEDARUMA
- バッテリーで、1時間ほど動きます。
- HIGEDARUMA
- そして面白いのが、パソコンの熱の逃がし方。ファンで、馬の鼻の穴から外に出しているんです。
- BANNO
- 鼻の穴から!まるで、馬の鼻息ですね。
- HIGEDARUMA
- 作者さんの論文にも、馬の鼻息も再現している、と書かれていますよ。
- BANNO
- 真面目な仕組みに、ちゃんと遊び心があるのが楽しいです。
- BANNO
- それにしても、馬の頭の形がすごくきれいです。これは、どうやって作ったんですか?
- HIGEDARUMA
- Fusionという3D設計ソフトで形を作って、3Dプリンターで印刷しています。
- HIGEDARUMA
- 3Dプリンターは、溶かした樹脂を、下から1段ずつ積み重ねて形を作る機械なんです。
- BANNO
- 1段ずつ積むなら、宙に浮いた部分は、どうするんでしょう?
- HIGEDARUMA
- いいところに気づきましたね。ふつうは、サポートという仮の柱で下から支えて、あとで取り外します。
- HIGEDARUMA
- でも取った跡が残って、表面がざらざらになりやすいんです。
- BANNO
- 生き物のなめらかな形だと、跡が目立ちそうですね。
- HIGEDARUMA
- そこで、外側を12パーツほどに細かく分けて、それぞれ支えがほとんど要らない形にしたんです。
- HIGEDARUMA
- 中の部品まで数えると、40パーツ以上。張り出しの角度も、45度以内に抑えています。
- HIGEDARUMA
- おでこの部分は、立てて印刷することで、表面の段々を目立たなくしたそうです。
- BANNO
- 見た目のなめらかさまで、印刷の向きで工夫しているんですね。
- HIGEDARUMA
- 最初に、最低限の機能だけの試作品を作ってから、中の部品が収まるように頭の形を調整したんです。
- BANNO
- まず動くものを作ってから、形を整える。ものづくりの、王道の進め方ですね。
- BANNO
- 実際にかぶった人は、どんな反応だったんですか?
- HIGEDARUMA
- 作者さんは学会で、12人にかぶってもらった実験を発表しています。
- HIGEDARUMA
- 1人はレンズが目に合わなかったので、残りの11人で結果をまとめています。
- BANNO
- 11人は、どう感じたんでしょう?
- HIGEDARUMA
- まず、視野が広がったと答えた人は、11人中10人。
- HIGEDARUMA
- 後ろが見えることに驚いた、という声も上がりました。
- BANNO
- ほとんどの人が、広さを実感できたんですね。
- HIGEDARUMA
- さらに、馬になった気分を感じた人が、11人中8人です。
- BANNO
- 8人も!かぶりものの見た目も、効いていそうですね。
- HIGEDARUMA
- ただ、良いことばかりではありません。見える情報が多すぎる、と感じた人も8人いました。
- BANNO
- 急に後ろまで見えたら、頭が追いつかないかもしれません。
- HIGEDARUMA
- 机の上のペットボトルを持ち上げてもらう実験もしています。
- HIGEDARUMA
- すると全員が、正面ではなく、右か左の片方のカメラだけで見える側で、つかんだんです。
- BANNO
- 正面の、両目で見える場所は、使わなかったんですか?
- HIGEDARUMA
- 正面は、ものが二重に見えたり、ブレたりしやすいんです。それで距離がつかみにくかったようです。
- HIGEDARUMA
- 作者さんは、寄り目にすると左右の映像が重なりやすい、とも書いています。
- BANNO
- 歩くのは、どうだったんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 満足に歩けたと答えたのは、11人中2人だけでした。
- BANNO
- 人間が馬の目に慣れるのは、そう簡単ではない、ということですね。
- HIGEDARUMA
- 作者さんは、両目で立体的に見られるように改良していきたい、と次の目標を語っています。
- BANNO
- うまくいかない結果も、正直に数字で出しているのが、いいですね。
- BANNO
- それに、馬の見え方が体で分かれば、乗馬などで馬と接するときにも役立ちそうです。
- HIGEDARUMA
- まさに、論文でも、馬のストレスを減らして安全に触れ合えるように、という狙いが書かれています。
- BANNO
- この作品は、ヒーローズ・リーグ2024で、3つの賞を受けています。
- HIGEDARUMA
- 審査員からは、造形も鼻からの排熱も、すべてが高い精度でぶっ飛んでいる、と評されたそうです。
- BANNO
- ぶっ飛んでいる、最高のほめ言葉ですね。
- HIGEDARUMA
- 作品ページには、イベントで使いたい、という企業からの問い合わせまで届いていましたよ。
- BANNO
- 作ったのは、齋藤達也さん。学会でも発表された、研究としての顔も持つ作品です。
- HIGEDARUMA
- 作品ページには、外装の分解図や、中の様子の写真もあります。リンクは概要欄にまとめておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩です。スマホのカメラが0.5倍の広角に切り替えられるなら、切り替えてみてください。
- BANNO
- その画面だけを見ながら、部屋の中を、ゆっくり見回してみる。
- HIGEDARUMA
- いつもより広く見えると、どんな感じがするか。それが、人間的な視点を捨ててみる、第一歩です。
- HIGEDARUMA
- 見えない動物の気持ちを、自分の体で確かめる。そんなものづくりも、できるんですよ。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、かぶると馬の目で世界が見える、U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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