ProtoPedia Video Maker

かぶると後ろまで見える「U-HMD」|馬の目で世界を見るヘッドマウントディスプレイ

紹介した作品: U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜ProtoPedia での反響: 閲覧 2,900+ ・ ♥ 34

ProtoPedia の作品「U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜」を2人のMCが初心者目線で紹介。185度の魚眼カメラ2台を馬の頭の左右に付け、人間の視野を320度まで広げます。カメラ・画面・小型PC・バッテリーをすべて頭の中に収め、PCの熱は鼻の穴から排熱。12パーツに分けた3Dプリントの造形や、11人の体験実験の正直な結果まで。ヒーローズ・リーグ2024 MAヒーローほか3賞。

チャプター

文字起こし(95行)
BANNO
ゆっくりばんのです。
HIGEDARUMA
ゆっくりひげだるまです。
BANNO
今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
HIGEDARUMA
今日紹介するのは、U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜。
BANNO
えっ、写真の人、白い馬の頭をかぶっていますよ!
HIGEDARUMA
そうなんです。これをかぶると、馬の目から見た世界を体験できるんです。
BANNO
馬の目から見た世界、ですか。人間とそんなに違うんでしょうか?
HIGEDARUMA
全然違うんですよ。なんと、自分の真横や後ろの方まで、一度に見えてしまうんです。
BANNO
後ろまで!それはちょっと、かぶってみたいですね。
BANNO
そもそも、馬の目って、どうなっているんですか?
HIGEDARUMA
人間の目は、顔の正面に2つ並んでいますよね。だから、見えるのは主に前の方です。
HIGEDARUMA
馬の目は、頭の左右の横側に付いているんです。
BANNO
たしかに、馬の顔って、目が横の方にありますね。
HIGEDARUMA
見える範囲を角度で表すと、ぐるっと一周が360度。馬は、そのうち350度ほどが見えるといわれています。
BANNO
350度ということは、見えないのは、ほんの少しだけですか?
HIGEDARUMA
はい。見えないのは、真後ろの10度くらいだけ。ほぼ全部が見えるパノラマなんです。
BANNO
そんな世界、想像もつきません。
HIGEDARUMA
そこでこの作品です。かぶると、見える範囲が320度まで広がります。
BANNO
馬の350度に、かなり近づいていますね!
HIGEDARUMA
作者さんは、作品ページにこう書いています。たまには、人間的な視点を捨ててみましょう。
BANNO
いい言葉ですね。いつもと違う目で、世界を見てみよう、ということですね。
BANNO
でも、どうやって人間の目で、後ろまで見えるようにしているんですか?
HIGEDARUMA
主役は、魚眼カメラです。魚の目のように、ふつうのカメラよりずっと広い範囲を1枚に写せるカメラなんです。
HIGEDARUMA
使っているのは、1台で185度まで写せる魚眼カメラ。それを馬の頭の左右に1台ずつ付けています。
BANNO
185度というと、1台で、前から真横の少し後ろまで写る、ということですか?
HIGEDARUMA
そのとおりです。しかも2台とも、少しだけ内側に、22.5度傾けて付けているんです。
BANNO
わざわざ内側に向けるのは、なぜなんですか?
HIGEDARUMA
正面を、左右両方のカメラで見られるようにするためです。両目で見える範囲が50度できます。
HIGEDARUMA
残りの左右は、それぞれ片方のカメラだけで見る。合わせて320度、というわけなんです。
BANNO
まさに、馬の目の付き方を、カメラでまねしているんですね。
BANNO
画面は、よくあるVRゴーグルを使っているんですか?
HIGEDARUMA
そこがこだわりで、既製のVRゴーグルは使っていないんです。
HIGEDARUMA
海外の通販で買った、左右に分かれた小さな液晶画面を、馬の頭の中に組み込んでいます。
BANNO
自分で組むと、何がいいんでしょう?
HIGEDARUMA
形を自由に決められて、軽くできるんです。全体で、重さは1キロほどに収まっています。
BANNO
1キロというと、1リットルの牛乳パック1本分くらいですね。
HIGEDARUMA
カメラの映像は、手のひらサイズのパソコンで処理して、画面に映しています。
HIGEDARUMA
プログラムは、Pythonというプログラミング言語と、画像を扱うための定番の道具箱、OpenCVです。
BANNO
パソコンまで、頭の上に載っているんですか?
HIGEDARUMA
はい。カメラも、画面も、パソコンも、バッテリーも、全部が馬の頭の中に入っているんです。
HIGEDARUMA
かぶって歩き回る前提なので、線を引きずらないように、とこだわったそうです。
BANNO
それなら、展示会場でも気軽に歩けますね。電池は、どれくらいもつんですか?
HIGEDARUMA
バッテリーで、1時間ほど動きます。
HIGEDARUMA
そして面白いのが、パソコンの熱の逃がし方。ファンで、馬の鼻の穴から外に出しているんです。
BANNO
鼻の穴から!まるで、馬の鼻息ですね。
HIGEDARUMA
作者さんの論文にも、馬の鼻息も再現している、と書かれていますよ。
BANNO
真面目な仕組みに、ちゃんと遊び心があるのが楽しいです。
BANNO
それにしても、馬の頭の形がすごくきれいです。これは、どうやって作ったんですか?
HIGEDARUMA
Fusionという3D設計ソフトで形を作って、3Dプリンターで印刷しています。
HIGEDARUMA
3Dプリンターは、溶かした樹脂を、下から1段ずつ積み重ねて形を作る機械なんです。
BANNO
1段ずつ積むなら、宙に浮いた部分は、どうするんでしょう?
HIGEDARUMA
いいところに気づきましたね。ふつうは、サポートという仮の柱で下から支えて、あとで取り外します。
HIGEDARUMA
でも取った跡が残って、表面がざらざらになりやすいんです。
BANNO
生き物のなめらかな形だと、跡が目立ちそうですね。
HIGEDARUMA
そこで、外側を12パーツほどに細かく分けて、それぞれ支えがほとんど要らない形にしたんです。
HIGEDARUMA
中の部品まで数えると、40パーツ以上。張り出しの角度も、45度以内に抑えています。
HIGEDARUMA
おでこの部分は、立てて印刷することで、表面の段々を目立たなくしたそうです。
BANNO
見た目のなめらかさまで、印刷の向きで工夫しているんですね。
HIGEDARUMA
最初に、最低限の機能だけの試作品を作ってから、中の部品が収まるように頭の形を調整したんです。
BANNO
まず動くものを作ってから、形を整える。ものづくりの、王道の進め方ですね。
BANNO
実際にかぶった人は、どんな反応だったんですか?
HIGEDARUMA
作者さんは学会で、12人にかぶってもらった実験を発表しています。
HIGEDARUMA
1人はレンズが目に合わなかったので、残りの11人で結果をまとめています。
BANNO
11人は、どう感じたんでしょう?
HIGEDARUMA
まず、視野が広がったと答えた人は、11人中10人。
HIGEDARUMA
後ろが見えることに驚いた、という声も上がりました。
BANNO
ほとんどの人が、広さを実感できたんですね。
HIGEDARUMA
さらに、馬になった気分を感じた人が、11人中8人です。
BANNO
8人も!かぶりものの見た目も、効いていそうですね。
HIGEDARUMA
ただ、良いことばかりではありません。見える情報が多すぎる、と感じた人も8人いました。
BANNO
急に後ろまで見えたら、頭が追いつかないかもしれません。
HIGEDARUMA
机の上のペットボトルを持ち上げてもらう実験もしています。
HIGEDARUMA
すると全員が、正面ではなく、右か左の片方のカメラだけで見える側で、つかんだんです。
BANNO
正面の、両目で見える場所は、使わなかったんですか?
HIGEDARUMA
正面は、ものが二重に見えたり、ブレたりしやすいんです。それで距離がつかみにくかったようです。
HIGEDARUMA
作者さんは、寄り目にすると左右の映像が重なりやすい、とも書いています。
BANNO
歩くのは、どうだったんでしょう?
HIGEDARUMA
満足に歩けたと答えたのは、11人中2人だけでした。
BANNO
人間が馬の目に慣れるのは、そう簡単ではない、ということですね。
HIGEDARUMA
作者さんは、両目で立体的に見られるように改良していきたい、と次の目標を語っています。
BANNO
うまくいかない結果も、正直に数字で出しているのが、いいですね。
BANNO
それに、馬の見え方が体で分かれば、乗馬などで馬と接するときにも役立ちそうです。
HIGEDARUMA
まさに、論文でも、馬のストレスを減らして安全に触れ合えるように、という狙いが書かれています。
BANNO
この作品は、ヒーローズ・リーグ2024で、3つの賞を受けています。
HIGEDARUMA
審査員からは、造形も鼻からの排熱も、すべてが高い精度でぶっ飛んでいる、と評されたそうです。
BANNO
ぶっ飛んでいる、最高のほめ言葉ですね。
HIGEDARUMA
作品ページには、イベントで使いたい、という企業からの問い合わせまで届いていましたよ。
BANNO
作ったのは、齋藤達也さん。学会でも発表された、研究としての顔も持つ作品です。
HIGEDARUMA
作品ページには、外装の分解図や、中の様子の写真もあります。リンクは概要欄にまとめておきますね。
BANNO
では、今日の一歩です。スマホのカメラが0.5倍の広角に切り替えられるなら、切り替えてみてください。
BANNO
その画面だけを見ながら、部屋の中を、ゆっくり見回してみる。
HIGEDARUMA
いつもより広く見えると、どんな感じがするか。それが、人間的な視点を捨ててみる、第一歩です。
HIGEDARUMA
見えない動物の気持ちを、自分の体で確かめる。そんなものづくりも、できるんですよ。
BANNO
さて、今日紹介したのは、かぶると馬の目で世界が見える、U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜でした。
HIGEDARUMA
次回の作品でも、ゆっくりしていってね。

クレジット

紹介した作品
U-HMD 〜馬の視野を体験できるヘッドマウントディスプレイ〜
作者: 齋藤 達也 Tatsuya Saito
ライセンス: CC BY 4.0
※作品の画像・動画は、紹介のために切り抜き・編集して使用しています。
声
BANNO さんと HIGEDARUMA さんの録音をもとにした合成音声です。

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