ProtoPedia Video Maker

筒の中に立体が「在る」──メガネなしで、どこから見ても立体に見える円筒ディスプレイ「I/F[around]」

紹介した作品: 円筒形の立体視装置:I/F[around]ProtoPedia での反響: 閲覧 1,200+ ・ ♥ 35

ProtoPedia の作品「円筒形の立体視装置:I/F[around]」を2人のMCが初心者目線で紹介。黒い筒をのぞくと、中に物が本当に在るように見える裸眼立体ディスプレイです。AIの「顔」をもっとワクワクするものにしたいという作者の動機、人が奥行きを感じる目の仕組み、回転するすき間の覆いとLEDで約1度刻みに絵を出し分けるトリック、FPGAとUnityの構成、博物館の解説役という使い道まで。

チャプター

文字起こし(92行)
BANNO
ゆっくりばんのです。
HIGEDARUMA
ゆっくりひげだるまです。
BANNO
今日もプロトペディアから、とびきり不思議な作品を紹介していきますよ。
HIGEDARUMA
今日紹介するのは、円筒形の立体視装置:I/F[around]。
BANNO
写真を見ると、黒い筒の中に、白く光る塊が浮かんでいますね。
HIGEDARUMA
はい。この筒をのぞくと、中に物が本当に在るように見えるんです。しかもメガネもゴーグルも要りません。
BANNO
映画館の3Dだと、専用のメガネをかけますもんね。
HIGEDARUMA
そうなんです。さらに、正面からのぞけば物の正面、横からのぞけば物の横の姿が見えるんですよ。
BANNO
えっ、回り込むと、ちゃんと横顔になるんですか。
HIGEDARUMA
なります。しかも筒のまわりを何人で囲んでも、全員がそれぞれの位置から正しい立体を見られるんです。
BANNO
どうして平らな光で、そんなことができるのか。今日はその謎を解いていきましょう。
BANNO
まず気になるのが、作者さんはなぜこれを作ろうと思ったのか、なんですよね。
HIGEDARUMA
きっかけは、知り合いから送られてきた1本のリンクだったそうです。
HIGEDARUMA
その人は、ChatGPTに自分の同人誌を読み込ませて、その知識で質問に答えさせていたんです。
BANNO
自分の本を読んだAIが、自分の代わりに答えてくれるんですか。
HIGEDARUMA
はい。返ってきた答えが「あー確かに言いそう」という内容で。作者は、人の知識はデジタルにできる、と感じたそうです。
HIGEDARUMA
ちょうど同じころ、ロボット研究で知られる石黒先生の、アバターの話も聞いていたそうなんです。
BANNO
アバターというのは、自分の代わりに画面の中で動く分身のキャラクターですよね。
HIGEDARUMA
そうです。AIの知識と分身を組み合わせれば、時間や場所に縛られずに知識を伝えられる。作者は、SFが今そこに来ている、と書いています。
BANNO
わくわくしますね。でも、AIと話すなら、パソコンやスマホの画面で十分な気もします。
HIGEDARUMA
作者もそこで悩んだんです。文字だけのやり取りは、あまりに無機質すぎる。
HIGEDARUMA
ロボットにすると、見た目が固定なので、知識ごとに中の人を切り替えにくい。
BANNO
じゃあ、液晶画面にキャラクターを映すのは、どうなんでしょう。
HIGEDARUMA
そこで作者のひと言が、これです。液晶画面…もっとワクワクしたいやん。
BANNO
あはは、本音ですね。でも、その気持ちはすごく分かります。
HIGEDARUMA
それで、そこに在るように見える立体表示を作ろう、と決めたそうです。
BANNO
作品名のI/Fも、そこにつながっているんですか。
HIGEDARUMA
はい。I/Fはインターフェースの略で、人と機械をつなぐ窓口という意味なんです。aroundは、ぐるりと囲む、ですね。
BANNO
AIとわたしたちの間に立つ、ぐるっと見られる窓口。名前にちゃんと意味があるんですね。
BANNO
では本題です。平らに光っているだけなのに、どうして奥行きを感じるんでしょうか。
HIGEDARUMA
まず、わたしたちの目の仕組みからです。見ているみなさんも一緒に、人差し指を1本、顔の前に立ててみてください。
BANNO
はい、立てました。
HIGEDARUMA
右目だけ、左目だけ、と交互につぶしてみてください。指が左右にずれて見えませんか。
BANNO
やってみました。あっ、本当だ。指がぴょんぴょん跳ねて見えます。
HIGEDARUMA
右目と左目は離れているので、同じ物でも少しずつ違う絵を見ているんです。脳はそのずれから、奥行きを計算しているんですよ。
HIGEDARUMA
もう1つ、頭を左右に動かすと、近くの物ほど大きく動いて見えますよね。これも奥行きの手がかりなんです。
BANNO
つまり、見る場所によって違う絵が目に届けば、脳が勝手に立体だと思ってくれるんですね。
HIGEDARUMA
その通りです。ただ、ふつうの画面には弱点があって。
HIGEDARUMA
テレビは、どこから見ても同じ絵しか出せません。横から見ても、正面の絵が斜めに見えるだけなんです。
BANNO
たしかに。テレビの裏に回り込んでも、俳優さんの後ろ姿は見えませんもんね。
HIGEDARUMA
そう。だからこの装置は、見る向きごとに別の絵を届ける、という難題に挑んでいるんです。
BANNO
見る向きごとに別の絵。いったい、どうやっているんですか。
HIGEDARUMA
使っている部品は、大きく2つです。1つ目は、筒の内側に曲げて並べた、LEDの電光掲示板。
HIGEDARUMA
2つ目は、その外側をぐるりと覆う、細いすき間がたくさん空いた覆いです。パララックスバリアと呼ばれます。
BANNO
すき間の空いた覆い……ブラインドのようなものでしょうか。
HIGEDARUMA
近いです。すき間がとても細いので、ある方向からのぞくと、LEDが1列分しか見えないんです。
HIGEDARUMA
作品ページによると、すき間を通った光が見える範囲は、約1度の幅に絞られます。
BANNO
1度だけ。ほんの少し横にずれたら、もう見えないんですね。
HIGEDARUMA
そうなんです。そしてこの覆いが、くるくる回るんですよ。
HIGEDARUMA
覆いが回ると、すき間の位置が変わって、どのLEDの列がどの方向から見えるかが入れ替わるんです。
BANNO
あっ、じゃあ、すき間がこっちを向いた瞬間だけ、こっち向けの絵を光らせればいい。
HIGEDARUMA
まさにそれです。約1度刻みで、角度ごとに違う絵を光らせ分けているんです。
HIGEDARUMA
デモ動画によると、絵が見える範囲は筒の前側の180度。すべての向きに同時に絵を出すので、何人で囲んでも全員に正しい絵が届くんです。
BANNO
回転がすごく速いから、わたしたちの目には1つの立体に見える、ということですね。
HIGEDARUMA
はい。ここで全体の構成図を見てみましょう。
HIGEDARUMA
まずパソコンで、ゲームエンジンのUnityを使って、角度ごとの絵を作ります。それをHDMIのケーブルで送ります。
BANNO
テレビとゲーム機をつなぐ、あのケーブルですね。
HIGEDARUMA
そうです。受け取る側は、FPGAという、中の回路を自分で書き換えられるチップなんです。
BANNO
わざわざ、そんな特別なチップを使うんですか。
HIGEDARUMA
はい。ちらつかせないためには、絵の切り替えをものすごく速くしないといけません。角度ごとの絵をためておくメモリもたくさん要るんです。
HIGEDARUMA
さらにパソコンで描いた映像を、その場で受け取りたい。この3つをこなすために、速い処理が得意なFPGAを選んだそうです。
BANNO
覆いを回すモーターや、回転の位置を測るセンサーも、そのチップから動かしているんですね。
HIGEDARUMA
はい。そして作者はこう書いています。中の人は機械屋さんなので、この構成が良いのかいまだによくわかってないです。
BANNO
えっ、ここまで作って、まだ手探りなんですか。
HIGEDARUMA
そうなんです。本職は機械の人が、電子回路にも挑んで、ここまで形にした。個人開発者として、すごく勇気をもらえる話なんですよ。
BANNO
キャラクターや声はどうしているんでしょう。
HIGEDARUMA
3Dのキャラクターは、VRoid Studioで作れます。デモ動画のナレーションは、音声合成ソフトのVOICEPEAKです。
BANNO
これ、実際にはどんな場所で使えそうですか。
HIGEDARUMA
作者が考えているのは、博物館の展示解説なんです。
HIGEDARUMA
前の年に作った、立体表示で解説する博物館、あなたミュージアムの続きとして設計したそうです。
BANNO
展示の横に筒があって、中のキャラクターが説明してくれる。子どもは絶対のぞき込みますね。
HIGEDARUMA
しかも何人で囲んでも立体に見えるので、展示会場にぴったりなんです。
BANNO
AIがふだんの質問に答えて、深いところは人が手伝う、という未来ですね。
HIGEDARUMA
ただ、正直に言うと、今は用意したアニメーションを流している段階です。
HIGEDARUMA
作者も、表面ができたにすぎない、と書いていて、次回「RAGとかAIとかを頑張る」と予告しています。
BANNO
RAG、というのは何でしょう。
HIGEDARUMA
AIに資料を読ませて、その中身をもとに答えさせる仕組みです。さっきの同人誌の話と同じ発想ですね。
BANNO
なるほど。最初のきっかけと、ちゃんとつながっているんですね。続きが楽しみです。
BANNO
そしてこの作品、ヒーローズ・リーグ2025で、2つの賞を受賞しています。
HIGEDARUMA
オンラインヒーローと、ノラ・メディアアート賞ですね。オンラインヒーローは、たくさんの参加者の支持で選ばれる賞なんです。
BANNO
主催のMAさんの講評は、作者の「もっとワクワクしたいやん」を受けて、「めちゃくちゃワクワクしました!」でした。
HIGEDARUMA
作者の本音が、ちゃんと見た人に届いたんですね。
BANNO
作ったのは、OUCHI Laboratoryさん。関東を中心に、メイカーイベントで実機を展示しているそうです。
HIGEDARUMA
作品ページのコメントにも、実機見たい、という声が寄せられていました。見かけたら、ぜひのぞいてみてください。
BANNO
では、今日できる最小の一歩です。
HIGEDARUMA
まずは、さっきの指1本の実験を、もう一度やってみてください。目が奥行きを作っているのを、10秒で体感できます。
HIGEDARUMA
もう一歩進むなら、厚紙に細いすき間を1本切って、のぞく角度を変えてみてください。
HIGEDARUMA
すき間の後ろに色の違う紙を並べておくと、角度によって見える色が変わります。これが、この装置の仕組みの第一歩なんです。
BANNO
紙とはさみだけで、仕組みの入り口に立てるんですね。それなら今日すぐできそうです。
BANNO
もっとワクワクしたい、という気持ちから始まったものづくり。わたしたちも見習いたいですね。
BANNO
さて、今日紹介したのは、筒の中に立体が在るように見える、円筒形の立体視装置:I/F[around]でした。
HIGEDARUMA
次回の作品でも、ゆっくりしていってね。

クレジット

紹介した作品
円筒形の立体視装置:I/F[around]
作者: OUCHI Laboratory
ライセンス: CC BY 4.0
※作品の画像・動画は、紹介のために切り抜き・編集して使用しています。
声
BANNO さんと HIGEDARUMA さんの録音をもとにした合成音声です。

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