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掃除機に付けたiPhoneが「かけた床」を塗っていく|自閉症の男の子が一人で掃除できた、ARの取り組み

紹介した作品: 掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用ProtoPedia での反響: 閲覧 2,300+ ・ ♥ 13

ProtoPedia の作品「掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用」を2人のMCが初心者目線で紹介。普通の掃除機にiPhoneを付けると、画面の中の床が、掃除機をかけたところから色で塗られていきます。床の高さだけを使ったシンプルな仕組み、特別支援学校の授業で、ひとりでは床の約3割未満しかかけられなかった男の子が、4回の練習で一人でかけられるようになり家でも続けたこと、なぜ効いたのかという作者の仮説、そして「おもしろいからやってみた」を続けた先に待っていた人たちの話まで。

チャプター

文字起こし(77行)
BANNO
ゆっくりばんのです。
HIGEDARUMA
ゆっくりひげだるまです。
BANNO
今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
HIGEDARUMA
今日紹介するのは、掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用。
BANNO
掃除機をどこまでかけたか、ですか。それ、すごく分かります。
BANNO
行ったり来たりしているうちに、あれ、ここかけたっけ?ってなるんですよね。
HIGEDARUMA
まさにそれなんです。作者の大西拓人さんも、自分がよくかけ忘れていたそうなんですよ。
HIGEDARUMA
そこで2017年に作ったのが、かけた床が色で塗られていくアプリなんです。
BANNO
でも今日のタイトルには、自閉症児・者の自立活動、とも入っていますね。
HIGEDARUMA
はい。この小さなアプリが、ある男の子の「一人でできた」につながったんです。今日はそのお話です。
BANNO
まず、どんなふうに使うのか教えてください。
HIGEDARUMA
家にある普通の掃除機の持ち手に、スマホホルダーでiPhoneを取り付けるだけなんです。
HIGEDARUMA
カメラが床を映していて、掃除機が通ったところから、画面の中の床に色の帯が塗られていきます。
BANNO
へえ、塗り絵みたいですね。塗れていないところが、まだかけていない場所なんですね。
HIGEDARUMA
そうなんです。これがAR、カメラに映した景色に、コンピューターの絵を重ねて見せる技術なんですよ。
BANNO
専用の掃除機じゃなくていいんですね。それは助かります。
HIGEDARUMA
作者いわく、iPhoneを付けるだけなので、ほとんどの一般的な掃除機で使えるそうです。
BANNO
でも、iPhoneはどうやって、掃除機が通った場所が分かるんですか?
HIGEDARUMA
仕組みはとてもシンプルなんです。まず、iPhoneがカメラの映像から床の高さを見つけます。
HIGEDARUMA
この床を見つける部分は、アップルが用意しているARKitという道具がやってくれるんですよ。
BANNO
床の高さが分かったら、次はどうするんですか?
HIGEDARUMA
その高さに、目に見えない大きな板を敷きます。そして画面のまんなかがその板とぶつかる点を追いかけるんです。
HIGEDARUMA
その点を、横幅の広い線でつないでいく。掃除機と一緒に動くので、通った跡が帯になるわけです。
BANNO
なるほど。床の高ささえ分かれば、あとは線を引くだけなんですね。
HIGEDARUMA
はい。作者も、シンプルな実装で済むように床の高さだけを使った、と書いています。ここが個人開発のうまいところなんですよ。
BANNO
最初の版は、テレビでも紹介されたんですよね。
HIGEDARUMA
そうなんです。2017年にはテレビ番組で紹介されて、Mashup Awardsというコンテストでは、For Pro部門の優秀賞も取っています。
BANNO
そんな便利アプリが、どうして学校の授業につながったんですか?
HIGEDARUMA
作者は発表のあとも、このアプリが役立つ場所をずっと探していたんです。
HIGEDARUMA
そして2019年、作者のほうから、埼玉県立本庄特別支援学校に声をかけて、一緒に取り組むことになりました。
BANNO
授業の名前が、自立活動、でしたね。どんな授業なんでしょうか。
HIGEDARUMA
障がいがあることで生まれる、生活や勉強の困りごとを、本人が乗り越えていくための授業なんです。
HIGEDARUMA
その授業の課題のひとつが、掃除機を自分でかけること。協力してくれたのは、当時6年生のKくんです。
BANNO
アプリを使う前は、Kくんはどんな様子だったんですか?
HIGEDARUMA
一人で掃除機をかけると、かけるべき床の、約30%未満しかかけられなかったそうです。
BANNO
約30%未満…。かけるべき床の、3分の1もかけられていなかったんですね。
HIGEDARUMA
なので先生が、レーザーポインターで次はここ、と指したり、床に紙のテープを貼って細かく区切ったりしていたんです。
BANNO
先生がずっとそばで、手助けしていたわけですね。
BANNO
では、アプリを付けた掃除機を使ったら、どうなったんでしょうか。
HIGEDARUMA
一人でも、掃除機を問題なくかけられるようになったんです。
BANNO
おお、一人でですか!
HIGEDARUMA
しかも、教室で4回試したら全く問題なくかけられたので、そのあとはKくんの家でもやるようになったそうです。
BANNO
学校でできたことが、家でもできるようになった。これは大きいですね。
BANNO
先生は、どんなふうに受け止めたんでしょうか。
HIGEDARUMA
担当の小岩先生が、作品ページにこう書いています。
HIGEDARUMA
Kくんにとっては、一人で、全てを行えるということがとても嬉しかったようです。
HIGEDARUMA
障がいのあるお子さんは、人の支援がつくことが多く、「一人でできた」の機会は少ない、とも書かれています。
BANNO
そうか…。いつも誰かが手伝ってくれるぶん、一人でやりきる経験は、なかなか持てないんですね。
BANNO
だから、掃除機を最後まで一人でかけられたことが、すごく大事なんですね。
BANNO
それにしても、床に色が付くだけで、どうしてそこまで変わるんでしょうか?
HIGEDARUMA
作者は、仮説としてこう説明しています。キーワードは、頭の中でやっている2つの仕事なんです。
HIGEDARUMA
ひとつ目は、どこまでやったかを覚えておく仕事。ふたつ目は、次にどこをやるかを決める仕事です。
BANNO
たしかに掃除機って、その2つを頭の中でずっとやっていますね。
HIGEDARUMA
そうなんです。でも画面を見れば、かけた所は塗られているし、まだの所は塗られていない。
HIGEDARUMA
つまり、頭の中でやっていた2つの仕事を、画面が代わりに引き受けてくれる、という考え方なんです。
BANNO
あ、先生のテープやポインターがやっていたことを、画面がやってくれるわけですね。
HIGEDARUMA
まさにそれです。しかも人の手がいらない。だから、Kくんが一人でできたんです。
BANNO
ARというと、ゲームでキャラクターが出てくるようなものを思い浮かべていました。
HIGEDARUMA
作者はそこも面白い見方をしていて、ARは今いる場所に、別の場所や架空の世界を重ねるだけじゃない、と言っているんです。
HIGEDARUMA
このアプリが重ねているのは、ほんの少し前の自分の動き。作者はこれを、短い時間軸のAR、と呼んでいます。
BANNO
さっきの自分が、床に残っていくんですね。なんだか素敵な言い方です。
HIGEDARUMA
動きを測って、すぐに見せ返す。それだけで、人ができることを広げられる、と作者は考えているんです。
BANNO
この取り組み、まわりの反響はあったんでしょうか。
HIGEDARUMA
ネットで紹介されると、全国の先生から、学校に問い合わせが増えたそうなんです。
HIGEDARUMA
小岩先生は、たくさんの先生が「このテクノロジーがあれば」と思っているのだと思います、と書いています。
BANNO
同じことで困っている現場が、たくさんあったんですね。
BANNO
私がいちばんぐっと来たのは、これがもともと、作者自身の掃除のかけ忘れから始まったことです。
HIGEDARUMA
作品ページのコメントにも、2017年ごろはおもしろいからやってみた、という印象だった、とあるんです。
HIGEDARUMA
それから3年、アップデートしながら続けて、2020年のヒーローズ・リーグの決勝で発表しました。
BANNO
おもしろ半分で作ったものを、やめずに続けたら、待っていた人に届いたんですね。
HIGEDARUMA
はい。作者は、この領域がもっと盛り上がるきっかけになれば、と話しています。
BANNO
作品ページと、学校との取り組みのページのリンクは、概要欄に置いておきますね。
BANNO
では、今日の一歩。毎日の中で、あれ、どこまでやったっけ?となることを、ひとつ書き出してみてください。
HIGEDARUMA
洗濯物でも、薬を飲んだかでもいいんです。それを目に見えるようにできないか、考えてみましょう。
BANNO
自分の小さな困りごとが、いつか誰かの「一人でできた」になるかもしれませんね。
BANNO
さて、今日紹介したのは、掃除機をかけた床が色で見えるAR、掃除機をどこまでかけたかわかるARでした。
HIGEDARUMA
次回の作品でも、ゆっくりしていってね。

クレジット

紹介した作品
掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用
作者: 大西 拓人
ライセンス: CC BY 4.0
※作品の画像・動画は、紹介のために切り抜き・編集して使用しています。
声
BANNO さんと HIGEDARUMA さんの録音をもとにした合成音声です。

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