ProtoPedia Video Maker

音の鳴っている場所が、カメラの映像の上で光る「セミ捕り名人」|好奇心で作った装置が、一人の声で人を助ける道具へ

紹介した作品: セミ捕り名人ProtoPedia での反響: 閲覧 3,900+ ・ ♥ 31

ProtoPedia の作品「セミ捕り名人」を2人のMCが初心者目線で紹介。7個のマイクで音の方向を割り出し、カメラの映像に音の強さの地図を色で重ねて、どこで音が鳴っているかを目で見せる手作りの装置です。セミ探しで名前が変わったいきさつ、工場のエア漏れと275万円の市販品から始まった出発点、カメラとマイクのずれを合わせた工夫、そして片耳の聞こえない方の一言から CIVICTECH 賞の決勝、Hackaday Prize 2023 のファイナリストへ進んだ物語まで。

チャプター

文字起こし(90行)
BANNO
ゆっくりばんのです。
HIGEDARUMA
ゆっくりひげだるまです。
BANNO
今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
HIGEDARUMA
今日紹介するのは、セミ捕り名人。
BANNO
セミ捕り名人?虫取りの網か何かですか?
HIGEDARUMA
それが、網じゃないんです。カメラの映像の上に、いま音が鳴っている場所を、色で重ねて見せてくれる装置なんですよ。
BANNO
音が、目で見える?今日はその不思議な箱の話ですね。
BANNO
夏の公園で、セミがすぐそこで鳴いてるのに、どこにいるか全然見つからないこと、ありますよね。
HIGEDARUMA
ありますね。木の幹と同じような色で、じっとしてますから。
HIGEDARUMA
そこでこの箱を、鳴き声のするほうに向けます。
BANNO
向けると、どうなるんですか?
HIGEDARUMA
画面に映った景色の中で、音の出ている所だけが、赤や緑の色でぼわっと光るんです。
BANNO
天気予報の雨雲の地図みたいに、音の強い所ほど色が濃くなる感じですか?
HIGEDARUMA
まさにそれです。真ん中が赤、外に行くほど緑や青。音の強さの地図を、景色に重ねているんですよ。
BANNO
じゃあ、セミが鳴いている枝が、画面で光るわけですね。
HIGEDARUMA
はい。作者は、アイデアをもらってセミ探しに使ってみたら、思いのほかうまく見つけられた、と書いています。
HIGEDARUMA
それで、もともとの名前、Sound Visualizerから、セミ捕り名人に名前を変えたんです。
BANNO
名前を変えちゃうくらい、うまくいったんですね。
BANNO
でも、最初からセミのために作ったわけじゃないんですね?
HIGEDARUMA
違うんです。作者が最初に思い浮かべたのは、工場のエア漏れでした。
HIGEDARUMA
工場では、機械を動かすための、ぎゅっと押し縮めた空気が、細い管を通っています。
HIGEDARUMA
どこかに小さな穴が開くと、シューッと音がするんですよ。
BANNO
音で漏れているのは分かる。でも、どの穴かが分からない。セミと同じですね。
HIGEDARUMA
そうなんです。直径1ミリの穴でも、1年で9万円分の損になる、という目安もあるそうです。
BANNO
それは見つけたいですね!音を見えるようにする機械は、売っていないんですか?
HIGEDARUMA
あるんです。ただ作者が調べた製品は、定価で275万円。
HIGEDARUMA
作者は、価格がかわいらしくなかったので諦めました、と書いています。
BANNO
275万円!個人ではとても手が出ませんね。
HIGEDARUMA
そこで作者は、しまい込んでいた小さなコンピューターと、マイクが7個並んだ基板を引っ張り出したんです。
HIGEDARUMA
作者いわく、作った目的は、ただの好奇心。音の場所が目で見えたら楽しいな、というだけだったそうです。
BANNO
見えたら楽しいな。その気持ち、すごくよく分かります。
BANNO
ここで仕組みを教えてください。マイクで、どうして音の方向まで分かるんですか?
HIGEDARUMA
まず、人間の耳で考えてみましょう。右から音がすると、右の耳に少しだけ早く、少しだけ大きく届きますよね。
BANNO
たしかに。目をつぶっても、右か左かくらいは分かります。
HIGEDARUMA
この装置は、その耳が7つあるんです。六角形の角に6個、真ん中に1個。
HIGEDARUMA
7つのマイクへの音の届き方の違いから、どの方向から来たかを計算するんです。
HIGEDARUMA
結果は、縦16マス、横16マスの、音の強さの地図として出てきます。
BANNO
なるほど。耳が多いほど、細かく方向が分かるんですね。
HIGEDARUMA
頭脳は、Maix Bitという、手のひらサイズの小さなコンピューターです。
HIGEDARUMA
カメラと小さな画面が付いていて、MicroPythonという言葉でプログラムを書きます。
BANNO
その頭脳が、カメラの写真と、音の地図を重ねるんですね。どうやって重ねるんですか?
HIGEDARUMA
手順は3つです。景色を撮る。音のある所だけを型で切り抜く。そこにだけ、色を透かしてのせるんです。
BANNO
音のない所は、普通の景色のまま。だから、どこが鳴っているかが一目で分かるんですね。
HIGEDARUMA
そして体は、3Dプリンターで作ったケース。中に単4電池が入っているので、持ち歩けるんですよ。
BANNO
電池で動くから、公園にも持っていけるわけですね。
HIGEDARUMA
主役は、Maix Bitと、マイク7個の基板の2枚だけ。とてもシンプルな構成なんです。
BANNO
重ねるだけなら、簡単そうに聞こえますけど。
HIGEDARUMA
それが、ここに手作りならではの苦労があったんです。
HIGEDARUMA
ひとつ目は、見える範囲の広さ。カメラが写す範囲より、マイクが音を拾う範囲のほうが、ずっと広いんですよ。
BANNO
そのまま重ねると、ずれちゃうんですね。どうしたんですか?
HIGEDARUMA
音の地図の外側を切り捨てて、カメラに写る範囲だけを使ったんです。レンズも広く写るものに替えました。
HIGEDARUMA
ふたつ目は、カメラとマイクの真ん中の位置が、どうしてもずれることです。
BANNO
並べて付けている以上、仕方ないですよね。
HIGEDARUMA
そこで、約1メートル先でぴったり重なるように、角度を調整しています。
BANNO
ぴったり合う距離を決めて、そこに合わせたんですね。割り切りが上手です。
HIGEDARUMA
それに、このマイクの基板は、使い方の資料がほとんど無かったんです。
HIGEDARUMA
役割の分からない線が2本あって、作者は、2分の1の確率なのでエイヤでつないで、正解でした、と書いています。
BANNO
エイヤで!その思い切り、ちょっと勇気をもらえますね。
HIGEDARUMA
作者も、小さなコンピューターで、音と画像の処理を同時に動かせたのは驚きでした、と振り返っています。
BANNO
ここまで聞くと、楽しい発明品、という感じですけど。
HIGEDARUMA
実は、ここから話が大きく変わるんです。
HIGEDARUMA
以前、開発の様子を見た、片耳の聞こえない方から、こんな声が届いたんです。
HIGEDARUMA
音の方向が判らない私にはとても便利な装置。実用化してほしい。
BANNO
あっ…。片耳だと、音がどっちから来たか分かりにくいんですね。
HIGEDARUMA
はい。たとえば後ろから車が来ても、どっちからか分かりにくい。だから、音の方向が見えるだけで助けになるんです。
BANNO
楽しいなで作ったものが、誰かの困りごとにぴったりはまった。すごい瞬間ですね。
HIGEDARUMA
作者も、この声でモチベーションアップ、と書いています。
HIGEDARUMA
そして、ヒーローズ・リーグ2021に出したところ、CIVICTECH賞の決勝に選ばれたんです。
BANNO
シビックテックって、技術で地域や社会の困りごとを解決しよう、という取り組みですよね。
HIGEDARUMA
そうです。決勝の連絡が来たのは、発表のたった1週間前でした。
HIGEDARUMA
作者はそこから、音の方向を頭のブルブルで知らせる、シルクハット型の装置を作ったんです。
BANNO
シルクハット!?どうしてまた帽子に?
HIGEDARUMA
身に着ける道具は、おしゃれでないと使い続けてもらえない、という考えです。制作時間の8割を帽子づくりに使ったそうですよ。
BANNO
8割が帽子!そこまで本気なのが、いいですね。
HIGEDARUMA
しかも、作品ページのコメント欄に、あの声をくれた本人が現れたんです。これって多分自分です、と。
BANNO
ええっ、本人が!
HIGEDARUMA
作者は、ほぼ1年前のやり取りを見つけ出して、あの時のコメントのおかげで進化しました、と返しています。
BANNO
…一言の感想が、1年かけて形になって、本人に届いた。ちょっと泣けますね。
HIGEDARUMA
さらに2023年には、世界的なものづくりのコンテスト、Hackaday Prizeに挑戦しました。
BANNO
世界の舞台ですね!結果はどうだったんですか?
HIGEDARUMA
体の不自由な人を助ける技術の部門で、10作品のファイナリストに選ばれたんです。
BANNO
作ったのは、airpocketさんと、ひげぽけっとさんです。
HIGEDARUMA
プログラムと、ケースの3Dデータは、GitHubで公開されています。部品をそろえれば、同じものに挑戦できるんですよ。
BANNO
作者の記事やデモ動画のリンクは、概要欄に置いておきますね。
BANNO
では、今日の一歩。身の回りで、聞こえるのに、どこで鳴っているか分からない音を、ひとつ探してみてください。
BANNO
見つけたら、目をつぶって音のするほうを指さして、目を開けて答え合わせ。意外と外れるはずです。
HIGEDARUMA
その外れた分こそ、この装置が見せてくれる情報なんです。
HIGEDARUMA
もう一歩いくなら、作者のQiitaの記事をのぞいてみてください。配線やプログラムが、まるごと載っていますよ。
BANNO
さて、今日紹介したのは、音の場所が目で見える箱、セミ捕り名人でした。
HIGEDARUMA
次回の作品でも、ゆっくりしていってね。

クレジット

紹介した作品
セミ捕り名人
作者: airpocket・ひげぽけっと
ライセンス: CC BY 4.0
※作品の画像・動画は、紹介のために切り抜き・編集して使用しています。
声
BANNO さんと HIGEDARUMA さんの録音をもとにした合成音声です。

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