音の鳴っている場所が、カメラの映像の上で光る「セミ捕り名人」|好奇心で作った装置が、一人の声で人を助ける道具へ
ProtoPedia の作品「セミ捕り名人」を2人のMCが初心者目線で紹介。7個のマイクで音の方向を割り出し、カメラの映像に音の強さの地図を色で重ねて、どこで音が鳴っているかを目で見せる手作りの装置です。セミ探しで名前が変わったいきさつ、工場のエア漏れと275万円の市販品から始まった出発点、カメラとマイクのずれを合わせた工夫、そして片耳の聞こえない方の一言から CIVICTECH 賞の決勝、Hackaday Prize 2023 のファイナリストへ進んだ物語まで。
チャプター
0:00オープニング0:20音が「見える」装置0:53声はするのに、姿が見えない2:01工場のエア漏れ、音はすれども…3:22人の耳も、届き方の差で方向を感じる5:04カメラより、マイクの範囲が広い6:24「実用化してほしい」8:40コードとケースのデータを公開9:38エンディング
文字起こし(90行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、セミ捕り名人。
- BANNO
- セミ捕り名人?虫取りの網か何かですか?
- HIGEDARUMA
- それが、網じゃないんです。カメラの映像の上に、いま音が鳴っている場所を、色で重ねて見せてくれる装置なんですよ。
- BANNO
- 音が、目で見える?今日はその不思議な箱の話ですね。
- BANNO
- 夏の公園で、セミがすぐそこで鳴いてるのに、どこにいるか全然見つからないこと、ありますよね。
- HIGEDARUMA
- ありますね。木の幹と同じような色で、じっとしてますから。
- HIGEDARUMA
- そこでこの箱を、鳴き声のするほうに向けます。
- BANNO
- 向けると、どうなるんですか?
- HIGEDARUMA
- 画面に映った景色の中で、音の出ている所だけが、赤や緑の色でぼわっと光るんです。
- BANNO
- 天気予報の雨雲の地図みたいに、音の強い所ほど色が濃くなる感じですか?
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。真ん中が赤、外に行くほど緑や青。音の強さの地図を、景色に重ねているんですよ。
- BANNO
- じゃあ、セミが鳴いている枝が、画面で光るわけですね。
- HIGEDARUMA
- はい。作者は、アイデアをもらってセミ探しに使ってみたら、思いのほかうまく見つけられた、と書いています。
- HIGEDARUMA
- それで、もともとの名前、Sound Visualizerから、セミ捕り名人に名前を変えたんです。
- BANNO
- 名前を変えちゃうくらい、うまくいったんですね。
- BANNO
- でも、最初からセミのために作ったわけじゃないんですね?
- HIGEDARUMA
- 違うんです。作者が最初に思い浮かべたのは、工場のエア漏れでした。
- HIGEDARUMA
- 工場では、機械を動かすための、ぎゅっと押し縮めた空気が、細い管を通っています。
- HIGEDARUMA
- どこかに小さな穴が開くと、シューッと音がするんですよ。
- BANNO
- 音で漏れているのは分かる。でも、どの穴かが分からない。セミと同じですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。直径1ミリの穴でも、1年で9万円分の損になる、という目安もあるそうです。
- BANNO
- それは見つけたいですね!音を見えるようにする機械は、売っていないんですか?
- HIGEDARUMA
- あるんです。ただ作者が調べた製品は、定価で275万円。
- HIGEDARUMA
- 作者は、価格がかわいらしくなかったので諦めました、と書いています。
- BANNO
- 275万円!個人ではとても手が出ませんね。
- HIGEDARUMA
- そこで作者は、しまい込んでいた小さなコンピューターと、マイクが7個並んだ基板を引っ張り出したんです。
- HIGEDARUMA
- 作者いわく、作った目的は、ただの好奇心。音の場所が目で見えたら楽しいな、というだけだったそうです。
- BANNO
- 見えたら楽しいな。その気持ち、すごくよく分かります。
- BANNO
- ここで仕組みを教えてください。マイクで、どうして音の方向まで分かるんですか?
- HIGEDARUMA
- まず、人間の耳で考えてみましょう。右から音がすると、右の耳に少しだけ早く、少しだけ大きく届きますよね。
- BANNO
- たしかに。目をつぶっても、右か左かくらいは分かります。
- HIGEDARUMA
- この装置は、その耳が7つあるんです。六角形の角に6個、真ん中に1個。
- HIGEDARUMA
- 7つのマイクへの音の届き方の違いから、どの方向から来たかを計算するんです。
- HIGEDARUMA
- 結果は、縦16マス、横16マスの、音の強さの地図として出てきます。
- BANNO
- なるほど。耳が多いほど、細かく方向が分かるんですね。
- HIGEDARUMA
- 頭脳は、Maix Bitという、手のひらサイズの小さなコンピューターです。
- HIGEDARUMA
- カメラと小さな画面が付いていて、MicroPythonという言葉でプログラムを書きます。
- BANNO
- その頭脳が、カメラの写真と、音の地図を重ねるんですね。どうやって重ねるんですか?
- HIGEDARUMA
- 手順は3つです。景色を撮る。音のある所だけを型で切り抜く。そこにだけ、色を透かしてのせるんです。
- BANNO
- 音のない所は、普通の景色のまま。だから、どこが鳴っているかが一目で分かるんですね。
- HIGEDARUMA
- そして体は、3Dプリンターで作ったケース。中に単4電池が入っているので、持ち歩けるんですよ。
- BANNO
- 電池で動くから、公園にも持っていけるわけですね。
- HIGEDARUMA
- 主役は、Maix Bitと、マイク7個の基板の2枚だけ。とてもシンプルな構成なんです。
- BANNO
- 重ねるだけなら、簡単そうに聞こえますけど。
- HIGEDARUMA
- それが、ここに手作りならではの苦労があったんです。
- HIGEDARUMA
- ひとつ目は、見える範囲の広さ。カメラが写す範囲より、マイクが音を拾う範囲のほうが、ずっと広いんですよ。
- BANNO
- そのまま重ねると、ずれちゃうんですね。どうしたんですか?
- HIGEDARUMA
- 音の地図の外側を切り捨てて、カメラに写る範囲だけを使ったんです。レンズも広く写るものに替えました。
- HIGEDARUMA
- ふたつ目は、カメラとマイクの真ん中の位置が、どうしてもずれることです。
- BANNO
- 並べて付けている以上、仕方ないですよね。
- HIGEDARUMA
- そこで、約1メートル先でぴったり重なるように、角度を調整しています。
- BANNO
- ぴったり合う距離を決めて、そこに合わせたんですね。割り切りが上手です。
- HIGEDARUMA
- それに、このマイクの基板は、使い方の資料がほとんど無かったんです。
- HIGEDARUMA
- 役割の分からない線が2本あって、作者は、2分の1の確率なのでエイヤでつないで、正解でした、と書いています。
- BANNO
- エイヤで!その思い切り、ちょっと勇気をもらえますね。
- HIGEDARUMA
- 作者も、小さなコンピューターで、音と画像の処理を同時に動かせたのは驚きでした、と振り返っています。
- BANNO
- ここまで聞くと、楽しい発明品、という感じですけど。
- HIGEDARUMA
- 実は、ここから話が大きく変わるんです。
- HIGEDARUMA
- 以前、開発の様子を見た、片耳の聞こえない方から、こんな声が届いたんです。
- HIGEDARUMA
- 音の方向が判らない私にはとても便利な装置。実用化してほしい。
- BANNO
- あっ…。片耳だと、音がどっちから来たか分かりにくいんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。たとえば後ろから車が来ても、どっちからか分かりにくい。だから、音の方向が見えるだけで助けになるんです。
- BANNO
- 楽しいなで作ったものが、誰かの困りごとにぴったりはまった。すごい瞬間ですね。
- HIGEDARUMA
- 作者も、この声でモチベーションアップ、と書いています。
- HIGEDARUMA
- そして、ヒーローズ・リーグ2021に出したところ、CIVICTECH賞の決勝に選ばれたんです。
- BANNO
- シビックテックって、技術で地域や社会の困りごとを解決しよう、という取り組みですよね。
- HIGEDARUMA
- そうです。決勝の連絡が来たのは、発表のたった1週間前でした。
- HIGEDARUMA
- 作者はそこから、音の方向を頭のブルブルで知らせる、シルクハット型の装置を作ったんです。
- BANNO
- シルクハット!?どうしてまた帽子に?
- HIGEDARUMA
- 身に着ける道具は、おしゃれでないと使い続けてもらえない、という考えです。制作時間の8割を帽子づくりに使ったそうですよ。
- BANNO
- 8割が帽子!そこまで本気なのが、いいですね。
- HIGEDARUMA
- しかも、作品ページのコメント欄に、あの声をくれた本人が現れたんです。これって多分自分です、と。
- BANNO
- ええっ、本人が!
- HIGEDARUMA
- 作者は、ほぼ1年前のやり取りを見つけ出して、あの時のコメントのおかげで進化しました、と返しています。
- BANNO
- …一言の感想が、1年かけて形になって、本人に届いた。ちょっと泣けますね。
- HIGEDARUMA
- さらに2023年には、世界的なものづくりのコンテスト、Hackaday Prizeに挑戦しました。
- BANNO
- 世界の舞台ですね!結果はどうだったんですか?
- HIGEDARUMA
- 体の不自由な人を助ける技術の部門で、10作品のファイナリストに選ばれたんです。
- BANNO
- 作ったのは、airpocketさんと、ひげぽけっとさんです。
- HIGEDARUMA
- プログラムと、ケースの3Dデータは、GitHubで公開されています。部品をそろえれば、同じものに挑戦できるんですよ。
- BANNO
- 作者の記事やデモ動画のリンクは、概要欄に置いておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩。身の回りで、聞こえるのに、どこで鳴っているか分からない音を、ひとつ探してみてください。
- BANNO
- 見つけたら、目をつぶって音のするほうを指さして、目を開けて答え合わせ。意外と外れるはずです。
- HIGEDARUMA
- その外れた分こそ、この装置が見せてくれる情報なんです。
- HIGEDARUMA
- もう一歩いくなら、作者のQiitaの記事をのぞいてみてください。配線やプログラムが、まるごと載っていますよ。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、音の場所が目で見える箱、セミ捕り名人でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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