食券機を改造した電子楽器「ShockAndKeys」|ボタンを押すと、食券の代わりに音が出る
ProtoPedia の作品「食券機型電子楽器 "ShockAndKeys"」を2人のMCが初心者目線で紹介。中古の食券機を2万5千円で落札し、64個のボタンを押すとドラムやシンセが鳴る電子楽器に改造した作品です。ボタン→合図(MIDI)→音の流れ、64個のボタンを読み分けるための失敗と自作基板8枚での乗り越え、未完成のまま展示に出して4つの版まで育て続けた歩み、そして今日できる最小の一歩まで。
チャプター
0:00オープニング0:20食券の代わりに、音が出る1:09「本当に鳴るんだ!」3:00① ボタンを読み取る5:03山場: 64個のボタンをどう読む?6:53「まだ全然未完成だけど、このまま出します」8:45今日できる最小の一歩9:36エンディング
文字起こし(83行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、食券機型電子楽器 "ShockAndKeys"。
- BANNO
- 食券機って、お店の入り口で、うどんやそばの券を買うあの機械ですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。本物の食券機を改造して、ボタンを押すと、食券の代わりに音が出るようにしたんですよ。
- BANNO
- じゃあ、ざるラーメンのボタンを押したら、ドラムがドン、と鳴るんですか?
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。64個のボタンが光りながら、ドラムや電子楽器の音を鳴らすんです。
- BANNO
- 見慣れた機械なのに、急に楽器になる。もう押してみたくなってきました。
- BANNO
- 実際に展示したとき、見た人はどんな反応だったんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- 最初のお披露目は、2023年のNT東京という、作った物を持ち寄る展示会でした。
- HIGEDARUMA
- SNSで知って来た人は、笑いながら「本当に鳴るんだ!」とボタンを押していたそうです。
- BANNO
- わかります。食券機が鳴ったら、まず笑っちゃいますよね。
- HIGEDARUMA
- 子どもは何分もボタンを連打して、音楽をやっている人は、あっという間に演奏し始めたそうなんです。
- BANNO
- 子どもも大人も夢中になれる。説明がいらないのが強いですね。
- HIGEDARUMA
- ただ、展示物だと気づかずに通り過ぎる人も多かったそうで。
- HIGEDARUMA
- 作者いわく、会場の雰囲気は「昭和末期の社員食堂の入り口」だったとか。
- BANNO
- あはは、本物すぎて、ただの券売機に見えちゃったんですね。
- BANNO
- そもそも、なぜ食券機を楽器にしようと思ったんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- 作者の言葉がいいんですよ。「ボタンが行列状に並べられた機械を見ると、コントローラにしか見えない病気なので」。
- HIGEDARUMA
- 「改造するという荒療治により、心を落ち着かせることができました。助かりました」と書いているんです。
- BANNO
- 病気って言い切るのが最高ですね。好きなものが、はっきりしている人なんだな。
- BANNO
- でも、食券機って、どこで手に入れたんですか?
- HIGEDARUMA
- ネットオークションです。8かける8のボタンが並んだ、動く保証のない中古品が、2万5千円で出ていて、即決で落札したそうです。
- HIGEDARUMA
- しかも、中に残っていた食券から、奈良県の生駒駅前にあった「う丼屋」というお店で使われていた機械だと分かったんですよ。
- BANNO
- うどん屋さんで働いていた機械が、第二の人生で楽器になった。ちょっと物語がありますね。
- BANNO
- ここからは仕組みです。ボタンを押すと、どうして音が出るんですか?
- HIGEDARUMA
- 流れは3段なんです。まず、Arduinoという小さなコンピュータが、どのボタンが押されたかを読み取ります。
- HIGEDARUMA
- 次に、それを「この高さの音を鳴らして」という合図に変えます。MIDIという、電子楽器どうしの共通の言葉なんですよ。
- BANNO
- ボタンが押されたら、楽器に「ドの音お願い」と伝言するわけですね。
- HIGEDARUMA
- そうです。最後に、その合図を受けた作曲ソフトが、実際の音を鳴らすんです。
- BANNO
- その作曲ソフトは、どこで動いているんですか?
- HIGEDARUMA
- 最初の版では、外につないだノートパソコンで鳴らしていました。
- HIGEDARUMA
- 作者は「動画を見て、かっこいい音だなと思ったそこのあなた、すみません」と書いていて。
- BANNO
- 正直ですね。音は、パソコンのおかげだったと。
- HIGEDARUMA
- そこで2つ目の版では、Raspberry Piという手のひらサイズのパソコンを中に入れて、食券機だけで音が出せるようにしたんです。
- HIGEDARUMA
- 画面の図は、作者が最初に描いた構成の予定図です。左上のreTerminalの場所に、実際はRaspberry Piが入りました。
- BANNO
- 楽器って、押してから音が遅れると困りませんか?
- HIGEDARUMA
- そこもこだわっています。ボタンを押してから音が出るまでの遅れを、5ミリ秒、つまり1000分の5秒以内に抑えたそうです。
- BANNO
- それなら、叩いた瞬間に鳴る感覚ですね。
- HIGEDARUMA
- あと、「食券」と書かれた黄色い表示も、画面に作り替えてあるんです。
- HIGEDARUMA
- 普段は元の機械と同じ見た目なのに、ボタンを押すと、映像がわざと乱れる演出がかかるんですよ。
- BANNO
- 見た目は昔のまま、でも押すとサイバーな感じになる。そのギャップが楽しいですね。
- HIGEDARUMA
- 使った材料は、ボタン担当のArduino、画面を作るProcessing、音と画面の頭脳のRaspberry Piです。
- BANNO
- でも、ボタンが64個もあると、配線だけで大変そうです。
- HIGEDARUMA
- そこが、この作品の一番の山場なんです。
- HIGEDARUMA
- 小さなコンピュータには、線をつなぐ差し込み口が限られていて、1個ずつつなぐと、まず足りなくなるんですよ。
- BANNO
- じゃあ、最初はどうしたんですか?
- HIGEDARUMA
- 1列8個のボタンを、電気を流れにくくする「抵抗」という部品でつないで、押されたボタンごとに電気の強さが少しずつ変わるようにしたんです。
- HIGEDARUMA
- 電気の強さを見れば、どのボタンか分かる。これで、8本の線で64個を読めるようにしました。
- BANNO
- なるほど、賢い!それで解決ですか?
- HIGEDARUMA
- それが、そう甘くなくて。同時に押すと、雑音や電気の弱まりで見分けがつかず、1列で1個しか認識できなかったんです。
- BANNO
- 楽器なのに和音が弾けないのは、つらいですね。
- HIGEDARUMA
- そこで3つ目の版で、部品を載せる専用の板、基板を8枚、自分で作ったんです。
- HIGEDARUMA
- キバンには、たくさんのボタンの状態を、少ない線で順番に受け渡す部品が載っていて、1枚で横1段の8個を担当します。
- HIGEDARUMA
- それを8枚、数珠つなぎにして、バケツリレーのように64個分の状態を運ぶんですよ。
- BANNO
- それなら、全部のボタンを同時に押しても大丈夫なんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。しかも、ボタンごとの「販売中」と「売り切れ」のランプまで、1つずつ光らせられるようになりました。
- BANNO
- 売り切れランプまで演出に使うって、食券機への愛を感じます。
- BANNO
- 審査の言葉にも、「一度に一つしか押せない、当たり前のルールから解き放たれた食券機」とあったそうですね。
- BANNO
- それにしても、最初から完成形だったわけじゃないんですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。最初の展示の前、作者はSNSに「まだ全然未完成だけど、時間ないのでこのまま出しますね」と書いていました。
- BANNO
- 完成を待たずに、まず見せちゃう。それで反応をもらえたのが大きいですね。
- HIGEDARUMA
- そこから展示のたびに作り直して、2025年までに4つの版になりました。
- HIGEDARUMA
- パソコンなしで鳴るようにして、プロのDJが使う音楽ソフトとつなげて、演奏モードも増やして。
- BANNO
- 金沢の展示では、徹夜に近い作業もあったとか。
- HIGEDARUMA
- 初日の夜、深夜までかけて、ボタンのメニューの紙を透明なシートに作り替えたそうです。
- HIGEDARUMA
- メニューの文字は残したまま、鳴る音の高さも書き足して、後ろのLEDの光がよく透けるようにしたんです。2日目は3時間ほどしか寝られなかったとか。
- BANNO
- その会場には、音楽プロデューサーでDJのtofubeatsさんも来て、実際に触っていったそうですね。
- HIGEDARUMA
- 作者もブログで、テンションが上がったと書いています。反響をたくさんもらえて嬉しかった、とも。
- BANNO
- 受賞もしています。作品づくりのコンテスト、ヒーローズ・リーグ2023で、オンラインヒーローと品モノラジオ賞の2つです。
- HIGEDARUMA
- 品モノラジオ賞の言葉は、「オークションで落札し、基板を起こし、展示には自家用車で運ぶ行動力に脱帽」でした。
- BANNO
- ネットのニュース記事でも、取り上げられたそうですね。
- HIGEDARUMA
- それでも作品ページには今も、「未完成なので、実装済みの点だけメモします」と書いてあるんですよ。
- BANNO
- 未完成のまま、ずっと育て続けている。それが一番かっこいいかもしれません。
- BANNO
- 作ったのは、うこさん。モノづくりと音楽が好きで、シンセサイザーも自作してきた人です。
- HIGEDARUMA
- デモ動画や作品ページのリンクは、概要欄に置いておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩。身の回りで、ボタンがずらっと並んでいるものを、ひとつ探してみてください。
- BANNO
- 電卓でも、リモコンでも。それが楽器だったら、どんな音を鳴らしたいか、想像してみるんです。
- HIGEDARUMA
- 作ってみたくなった人は、Arduinoとボタン1個から。押したら音が鳴る、それだけなら、週末でも試せるんですよ。
- BANNO
- 64個は、そのあとでいいんですね。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、ボタンを押すと食券の代わりに音が出る、食券機型電子楽器 "ShockAndKeys" でした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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