手を振るだけで最速の反撃! 大学教授が作った「さいきょうのいんぱくとぼたん」
ProtoPedia の作品「おじ教授のかんがえたさいきょうのいんぱくとぼたん」を2人のMCが初心者目線で紹介。ストリートファイター6で0.43秒しかない反撃を、パソコン画面の端のボタンと同じ「フィッツの法則」で押しやすくした栗原式インパクトボタン。電気を通すプラスチックの3Dプリントや、小指の観察から生まれた簡易版、プロゲーマーの反応まで。作者は津田塾大学の栗原一貴教授です。
チャプター
0:00オープニング0:20科学で救う、おじさんの反撃1:08ドライブインパクト=防げない大技2:43フィッツの法則4:21電気を通すプラスチックを印刷6:10プロゲーマーの番組へ7:58ProtoPedia賞 受賞9:14エンディング
文字起こし(81行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もプロトペディアから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、おじ教授のかんがえたさいきょうのいんぱくとぼたん。
- BANNO
- ひらがなのタイトル、かわいいですね。でも、さいきょうのボタンって何なんでしょう。
- HIGEDARUMA
- ゲーム用のボタンなんです。年齢で遅くなった反応を、ボタンの形で取り戻そうという作品で。
- BANNO
- ボタンの形で、ですか。作ったのは、どんな方なんですか?
- HIGEDARUMA
- 大学の先生、栗原一貴教授です。自分も困っていたおじさんの悩みを、科学で解決したんですよ。
- BANNO
- 先生が本気で作ったボタン。これは続きが気になります。
- BANNO
- まず、悩みのほうから聞かせてください。ゲームに詳しくない私でも分かりますかね?
- HIGEDARUMA
- 大丈夫です。ストリートファイター6という、1対1で戦う格闘ゲームの話なんです。
- HIGEDARUMA
- この中に、ドライブインパクトという大技があります。ガードで防げない、強い一撃です。
- BANNO
- 防げないなんて、ずるいですね。やられたら、どうしようもないんですか?
- HIGEDARUMA
- 手はあります。相手が出した瞬間に、こちらも同じ技を出せば、逆にこちらが大ダメージを与えられるんです。
- BANNO
- やられる前に、同じ技でやり返すんですね。その瞬間って、どれくらいなんですか?
- HIGEDARUMA
- 相手の技を見てから、ボタンを押すまでの猶予は、26フレーム。秒に直すと、0.43秒なんです。
- BANNO
- 0.43秒!まばたき1回ちょっと、くらいですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。フレームは、ゲームの画面が切り替わる単位で、1秒に60回。その26回ぶんしかありません。
- BANNO
- それは若い人でも大変そうです。おじさんには、なおさらですね。
- HIGEDARUMA
- ええ。反応の速さは年齢とともに落ちるので、おじさんには返せない技、と若者にからかわれているそうで。
- BANNO
- 言われると悔しいやつですね。作者の先生も、困っていたんですか?
- HIGEDARUMA
- はい。作品ページには、おじさんだってドライブインパクトに反撃したい!と書いてあるんです。気持ちが伝わりますよね。
- BANNO
- でも、反応の速さは鍛えるしかない気がします。ボタンで、どうにかなるものですか?
- HIGEDARUMA
- そこで一つ質問です。パソコンで、画面の端にあるボタンって、押しやすいと思いませんか?
- BANNO
- 端のボタン…。Windowsのスタートボタンや、Macのりんごマークのことですか?
- HIGEDARUMA
- そうです。マウスを思い切り端へ動かしても、矢印は画面の外へ行かず、端でぴたっと止まりますよね。
- BANNO
- たしかに!狙わなくても、勢いだけで押せちゃいます。
- HIGEDARUMA
- これを説明するのが、フィッツの法則です。人がボタンを押すまでの時間を予想する、有名な決まりなんです。
- BANNO
- どういう決まりなんですか?
- HIGEDARUMA
- ボタンが遠いほど、そして小さいほど、押すのに時間がかかる。言っているのは、それだけなんです。
- BANNO
- なるほど。じゃあ画面の端のボタンは、どうして速いんですか?
- HIGEDARUMA
- 端で必ず止まるので、どれだけ行きすぎても押せる。つまり、実質、無限に大きいボタンなんです。
- BANNO
- 無限に大きいボタン!言われてみると、そういうことですね。
- HIGEDARUMA
- 普通のボタンを押すときは、手を速く動かしたあと、行きすぎないように、最後にブレーキをかけますよね。
- HIGEDARUMA
- そのブレーキが、時間のロスなんです。栗原式は、コントローラーの端に壁を立てて、そこにボタンを付けました。思い切り手を振れば、必ず押せるんです。
- BANNO
- 壁にぶつければ止まるから、ブレーキがいらない。画面の端と同じ仕組みですね!
- BANNO
- ここからは作り方ですね。その壁のボタン、どうやって作ってるんですか?
- HIGEDARUMA
- コントローラーの右上に、壁の形をした部品を付けて、そこに触れると入力される仕組みです。
- BANNO
- 触れるだけで、ですか。ボタンなのに、押し込まなくていいんですね。
- HIGEDARUMA
- 最初の版は、電気を通すプラスチックを、3Dプリンターで印刷して作っています。
- BANNO
- プラスチックなのに電気を通す。そんな材料があるんですね。
- HIGEDARUMA
- はい。指が触れると電気が流れて、押したことになるんです。指には、スマホゲーム用の、電気を通す指サックを付けます。
- BANNO
- 電子工作は難しそうですけど、配線とか、たいへんじゃないですか?
- HIGEDARUMA
- そこがうまいところで。追加の電気回路はいらず、普通のボタンを付け替えるのと同じ作業で使えるんです。
- BANNO
- 付け替えるだけ!それなら、私でもできそうです。
- HIGEDARUMA
- 材料は、3Dプリンターと、Tinkercadという、ブラウザで使える無料の設計ツールです。
- BANNO
- でも、3Dプリンターを持っていない人は、どうするんですか?
- HIGEDARUMA
- それで作ったのが簡易版です。先生は、自分がボタンを押す手の動きを、じっくり観察したんですよ。
- BANNO
- 自分の手を観察、ですか。何か気づいたんですか?
- HIGEDARUMA
- 右上に手を伸ばすと、中指より先に、小指の右側の面が、壁にぶつかっていたんです。
- BANNO
- 小指の横!そこが先に当たるなら、そこにボタンがあればいいわけですね。
- HIGEDARUMA
- その通り。市販のゲーム用ボタンを、横向きに立てて付ける部品を作りました。両面テープで貼れるんです。
- BANNO
- 身近な観察から、誰でも試せる形にしたんですね。偉い!
- BANNO
- 実際に使ってみて、どうだったんでしょう。
- HIGEDARUMA
- 先生は自分で使い込んで、これはいいぞ、と確信。そこで有名なプロゲーマー、ときど選手にSNSで連絡したんです。
- HIGEDARUMA
- すると返事が来て、ときど選手のYouTube番組に呼ばれたんですよ。
- BANNO
- 自分から連絡したんですね。プロの反応は、どうでしたか?
- HIGEDARUMA
- ときど選手は、今まで、狙って押すために、無意識にブレーキをかけていたと気づいた、と話したそうです。
- BANNO
- プロでもブレーキをかけていた。まさに、さっきの話ですね。
- HIGEDARUMA
- しかも、無限大を感じた、と。番組でもかなり盛り上がったんですよ。
- BANNO
- 数字で見ても、速くなっているんですか?
- HIGEDARUMA
- 先生が自分で測ると、いつもの右下のボタンを小指で押すより、約2.9フレーム速く押せました。
- BANNO
- 26フレームの勝負で、約3フレーム。1割以上の差ですね。それは大きいです。
- HIGEDARUMA
- 番組が公開されると、印刷を代わりに請け負うサービスに、一晩で100件を超える注文が来ました。
- BANNO
- 一晩で100件!みんな、返したかったんですね。
- HIGEDARUMA
- さらに先生は、設計データを無料で公開しました。すると、ゲーマーたちが、自分で作り始めたんです。
- BANNO
- 自分で、ですか。どんなふうに?
- HIGEDARUMA
- 100円ショップのリング型のフックに、ボタンがぴったりはまると見つけた人もいて。名刺入れで作った人もいます。
- HIGEDARUMA
- ゲーマーの工夫で、どんどん広がったんです。手が不自由な方から、これなら操作できる、という声も届いたそうです。
- BANNO
- ゲームの悩みから始まって、誰かの助けにもなった。ぐっときますね。
- BANNO
- 最後に、作者の栗原先生について、もう少し教えてください。
- HIGEDARUMA
- 津田塾大学の教授で、人とコンピュータの関わりを研究しています。おしゃべりを邪魔する装置で、イグノーベル賞も受賞しているんです。
- BANNO
- イグノーベル賞!笑えて、考えさせられる研究に贈られる賞ですよね。納得です。
- HIGEDARUMA
- この作品も、ProtoPedia Award 2025で、ProtoPedia賞を受賞しました。
- BANNO
- おめでとうございます。作り方や番組を見たい人向けのリンクも、あるんですよね?
- HIGEDARUMA
- はい。ときど選手の番組と、試作品が届く支援コミュニティを、概要欄にまとめておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩です。パソコンのマウスを、画面の端へ、思い切り動かしてみてください。
- HIGEDARUMA
- 狙わなくても止まる、無限に大きいボタンを、1秒で体感できますよ。
- BANNO
- そして、毎日つい手間取るボタンを、端に寄せられないか考えてみる。それが発明の入口ですね。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、おじさんの反撃を科学で助ける、おじ教授のかんがえたさいきょうのいんぱくとぼたんでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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