未経験の米農家がAIと作った、田んぼの水を見張る仕組み「AgriSynapse」|市販100万円超を25万円以下に
ProtoPedia の作品「AgriSynapse センサーとアクチュエーターをLoRaで繋ぐIoTシステム」を2人のMCが初心者目線で紹介。マイコンもプログラミングも未経験だった米農家さんが、真夏の田んぼの水の見回りを楽にするために、AIと対話しながら作った水位の自動管理システムです。超音波で水の深さを測る箱と水門を動かす箱、少ない電気で遠くまで届く無線LoRa、乾電池3本で9か月以上動く省電力の工夫、そして市販品の数分の一に抑えた費用まで。
チャプター
0:00オープニング0:20田んぼの水を、自動で見張って開け閉め1:03水が減ったら開ける、たまったら閉める2:18田んぼには「測る係」と「動かす係」5:241作目は、失敗と破損の連続7:28手持ちの半自動水門に、後付けで全自動8:14DigiKey Make ONE Challenge 2026 ファイナリスト9:13エンディング
文字起こし(81行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、AgriSynapse センサーとアクチュエーターをLoRaで繋ぐIoTシステム。
- BANNO
- 名前だけ聞くと、難しそうですね。ひとことで言うと、何でしょう?
- HIGEDARUMA
- 田んぼの水の深さを機械が測って、足りなくなったら、水の入り口を自動で開けてくれる仕組みなんです。
- HIGEDARUMA
- しかも作ったのは、電子工作もプログラミングも、やったことがなかった、米農家さん本人なんですよ。
- BANNO
- えっ、農家さんが自分で!これは気になりますね。
- BANNO
- そもそも、田んぼの水って、そんなに手間がかかるものなんですか?
- HIGEDARUMA
- 稲を育てるには、田んぼの水の深さを、ちょうどよく保つのが大事なんです。
- HIGEDARUMA
- 水が減ったら水門を開けて水を入れる。たまったら閉める。これを毎日、田んぼごとに見て回るんですよ。
- BANNO
- 田んぼって、何枚もありますよね。それを全部見て回るんですか…
- HIGEDARUMA
- はい。作者は、毎年暑く厳しくなる夏の水の管理を、安く、楽にできないか、と考えたのが始まりだそうです。
- BANNO
- でも、自動でやってくれる機械って、もう売っていそうですけど。
- HIGEDARUMA
- 売ってはいるんです。ただ、安いものでも、田んぼ1枚あたり15万円以上かかるそうで。
- BANNO
- 1枚で15万円!10枚あったら…
- HIGEDARUMA
- 10枚に入れたら、軽く100万円を超えます。しかも、壊れたら自分で直すのは、基本的に無理なんです。
- BANNO
- それは、なかなか手が出ないですね。
- HIGEDARUMA
- そこで作者は、自作すれば安くできるんじゃないか、と思い立ちます。本人いわく、ここから、楽しいけれど泥沼の戦いが始まったそうです。
- BANNO
- じゃあ、出来上がった仕組みを教えてください。田んぼには、何が置いてあるんですか?
- HIGEDARUMA
- 田んぼに置くのは、2つの箱です。水の深さを測る係と、水門を動かす係。
- HIGEDARUMA
- それに、電波を集める中継器と、スマホで見る画面。この4つで動いているんです。
- BANNO
- まず、測る係は、どうやって水の深さを測るんですか?
- HIGEDARUMA
- 超音波を使います。人には聞こえない高い音を水面に当てて、跳ね返ってくるまでの時間で、距離を測るんです。
- BANNO
- コウモリみたいですね!
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。音の速さは気温で変わるので、夏の平均気温、34度に合わせて補正までしてあるんですよ。
- HIGEDARUMA
- これを10分ごとに測って、水が足りないと判断したら、動かす係に、開けて、と無線で伝えます。
- BANNO
- 動かす係は、その指示を受けて、どうやって水門を開けるんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 電気で伸び縮みする棒、リニアアクチュエーターで、水門の板を押したり引いたりするんです。
- BANNO
- なるほど。でも田んぼって、コンセントも無いですよね。電気はどうしてるんですか?
- HIGEDARUMA
- そこが一番の工夫なんです。測る係は、単1の乾電池3本で、9か月以上動くんですよ。
- BANNO
- 9か月!田んぼのシーズンより長いですね。
- HIGEDARUMA
- 稲作のシーズンは年に4か月ほどなので、2シーズン、電池交換なしでいけるそうです。
- HIGEDARUMA
- 秘密は、ほとんどの時間、眠っていること。10分に1回だけ起きて測って、またすぐ寝るんです。
- BANNO
- 水門の方は、モーターを動かすから、電気を使いそうですけど。
- HIGEDARUMA
- そっちは小さなソーラーパネルとバッテリーで、ずっと動き続けられる設計です。電線を引く必要がないんですよ。
- BANNO
- あと、山あいの田んぼだと、携帯の電波も届かなかったりしませんか?
- HIGEDARUMA
- そこで使うのが、LoRaという無線です。少ない電気で、遠くまで届くのが特徴なんです。
- HIGEDARUMA
- 田んぼの箱同士はLoRaで話して、中継器がその電波を集めて、インターネットに渡します。
- BANNO
- 中継器から先は、どうなるんですか?
- HIGEDARUMA
- グーグルのスプレッドシートに記録されて、スマホの画面で、全部の田んぼの水の深さと、電池の残りが見られるんです。
- HIGEDARUMA
- 電池が減ったり、通信が途切れたりしたら、チャットアプリのDiscordにお知らせも届きます。
- BANNO
- 見に行かなくても、家で分かる。暑い日には、本当にありがたいですね。
- BANNO
- 実際に動くところも、見てみたいです。
- HIGEDARUMA
- 作者のデモ動画では、まず水門を手で閉めて、少し待ちます。
- HIGEDARUMA
- すると、水門がゆっくり開き始めて、作者が、あ、開いてきましたね、と。水が足りないのを測る係が見つけて、自動で開けたんです。
- BANNO
- おお、本当に勝手に開いた!これは嬉しい瞬間ですね。
- BANNO
- これを、未経験から作ったんですよね。最初から、うまくいったんですか?
- HIGEDARUMA
- いえ。3年前の最初の作品は、家電をスマホで操作する市販の機器を、改造したものでした。
- HIGEDARUMA
- でも、Wi-Fiが必要で電気も食うし、改造ありきなので、たくさん失敗して、機器もたくさん壊したそうです。
- BANNO
- うわあ、それはつらい…。
- HIGEDARUMA
- ただ、そのおかげで、塩ビ管で入れ物を作る方法や、配線のやり方を覚えられた、と作者は書いています。
- BANNO
- 失敗が、ちゃんと次の材料になってるんですね。
- HIGEDARUMA
- 転機は去年です。AIが一気に進んで、プログラミングの壁が下がった。そこで、人生初の、手のひらサイズのコンピューターづくりに踏み出したんです。
- BANNO
- それまで、プログラミングの経験は?
- HIGEDARUMA
- エクセルのマクロ程度だったそうです。
- BANNO
- ほぼ初心者!じゃあ、AIに全部書いてもらったんですか?
- HIGEDARUMA
- 書いてもらったコードを何となく読んで、意図と違うんじゃないか、不具合の原因はどこか、と聞き返していったんです。
- BANNO
- 任せきりじゃなくて、AIと対話しながら育てたんですね。
- HIGEDARUMA
- 送っているのに受け取れない、文字化けする、固まる。通信のトラブルだらけでしたが、ジェミニと一緒に、ひとつずつ解決していったそうです。
- BANNO
- それで、お値段はどうなったんですか?
- HIGEDARUMA
- 入れ物はホームセンターの塩ビ管。電子回路の板も、初めて自分で作りました。データの置き場所も、無料の範囲で使っています。
- HIGEDARUMA
- その結果、システム全体で2万5千円以下。10枚の田んぼに入れても、25万円以下なんです。
- BANNO
- 市販なら100万円を超えるところが、25万円以下!作者が、自作の醍醐味、と書くのも分かりますね。
- HIGEDARUMA
- 頭脳はRaspberry Pi Pico W。無線の部品も、どれもネットで手に入るものなんです。
- BANNO
- これ、ほかの農家さんも使えるんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- 農家さんに人気の、電気なしで動く半自動の水門があるんですが、一度閉じたら、開けるのは手作業なんです。
- HIGEDARUMA
- そこにこのシステムを付け足せば、開け閉めが全部自動になります。
- BANNO
- 今あるものを生かせるのは、農家さんにとって助かりますね。
- HIGEDARUMA
- さらに、センサーやコードを少し変えれば、ビニールハウスの換気扇など、ほかの農業機械にも使えるように作ってあるんです。コードは全部、GitHubで公開されています。
- BANNO
- 作者は、どんな思いで作ったんでしょう?
- HIGEDARUMA
- 農業はいま、あらゆるコストが上がっている。その中で、これがあれば楽なのに、を安く解決したい、と書いています。
- BANNO
- 作ったのは、わたなべ農園の渡邊祐一さん。お米を育てている農家さんです。
- HIGEDARUMA
- DigiKey Make ONE Challenge 2026で、ファイナリストに選ばれています。
- BANNO
- 作品ページや、GitHub、デモ動画のリンクは、概要欄に置いておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩。毎日、様子を見に行っていることを、ひとつ思い浮かべてください。
- BANNO
- 植木の水やりでも、郵便受けでも大丈夫です。
- HIGEDARUMA
- それをAIに、これを自動で知らせてくれる仕組みを作るには、何から始めればいい?と聞いてみてください。
- HIGEDARUMA
- 未経験だった渡邊さんも、AIに聞き返すところから、ここまで来たんです。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、田んぼの水を見張って水門を開け閉めする、AgriSynapse センサーとアクチュエーターをLoRaで繋ぐIoTシステムでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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