吹くと秘密がよみがえる3Dプリントの笛「CipherFlute」|スマホなしでも、耳だけで読み出せる
ProtoPedia の作品「CipherFlute」を2人のMCが初心者目線で紹介。3Dプリンタで作った小さな笛の音の高さに、暗証番号のような「いざという時の秘密」をしまっておく仕組みです。笛の長さで情報を覚える方法、基準の笛と穴埋めの仕掛け、ピアノや照合笛で耳だけで読み出せる理由、AIに話しかけるだけでペン立てや本立てに笛を埋め込む方法、かるた札やペアカードで秘密を分けて持つ遊び心まで。
チャプター
0:00オープニング0:20笛の音で、秘密をしまう1:01めったに使わない。でも、なくしたら終わり1:54笛1本 = 12種類の音から1つ3:40ピアノで同じ高さの鍵を探す5:38AIに話しかけるだけで、笛を埋め込む7:52吹いた音は、周りに聞こえる9:24エンディング
文字起こし(84行)
- BANNO
- ゆっくりばんのです。
- HIGEDARUMA
- ゆっくりひげだるまです。
- BANNO
- 今日もProtoPediaから、とびきり面白い作品を紹介していきますよ。
- HIGEDARUMA
- 今日紹介するのは、CipherFlute。
- BANNO
- サイファーフルート。フルートって、あの笛のことですか?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。3Dプリンタで作った小さな笛に、暗証番号のような秘密をしまっておく仕組みなんですよ。
- BANNO
- 笛に秘密を?吹いたら秘密が出てくるんですか?
- HIGEDARUMA
- まさにそれです。しかも読み出すのに、スマホすらいらないんです。
- BANNO
- ええっ。今日はその不思議な笛の話ですね。
- BANNO
- そもそも、どんな秘密をしまうためのものなんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- たとえば、仮想通貨の財布を元に戻すための合言葉や、暗証番号です。
- BANNO
- ああ、めったに使わないけど、なくしたら取り返しがつかないやつですね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。紙に書いておくと、誰かに見られたり、なくしたりします。
- HIGEDARUMA
- スマホやクラウドに入れても、機械が壊れたりサービスが終わったりすると消えてしまうんですよね。
- BANNO
- たしかに。じゃあ、この作品はどこにしまうんですか?
- HIGEDARUMA
- 笛の中の空洞の長さとして、ペン立てや本立てのような日用品の中にしまうんです。
- BANNO
- 見た目はただの雑貨なのに、中に秘密が入っている。ちょっとスパイ映画みたいですね。
- HIGEDARUMA
- 作者は、毎日使うのではなく、いざという時に1回だけ読み出す使い方を想定しています。
- BANNO
- でも、笛の長さで、どうやって秘密を覚えておけるんですか?
- HIGEDARUMA
- 管が長い笛は低い音、短い笛は高い音が鳴りますよね。
- HIGEDARUMA
- この作品では、ピアノの高いほうの鍵盤12個ぶんの音から、笛1本ごとに1つを選んで作ってあるんです。
- BANNO
- 12種類の音のどれか、ということは、笛1本で12通りですね。
- HIGEDARUMA
- はい。それを何本も並べると、組み合わせがどんどん増えます。ダイヤル錠の桁が増えるイメージなんです。
- BANNO
- どれくらい並べれば、大事な合言葉が入るんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- クレジットカードの大きさの板に笛8本。財布に入る大きさの作例です。
- HIGEDARUMA
- 仮想通貨の財布の合言葉くらいの大きさなら、笛49本で記録できるんですよ。
- BANNO
- 49本!でも、笛ごとに形が違ったら、見ただけでバレちゃいませんか?
- HIGEDARUMA
- そこがうまいんです。外側の大きさは全部同じで、中の空洞の長さだけが違うんです。
- BANNO
- なるほど。でも私、絶対音感なんてないですよ。音を聞き分けられるか心配です。
- HIGEDARUMA
- 大丈夫です。音の高さが分かっている基準の笛を、最初に1本吹くんです。
- HIGEDARUMA
- ほかの笛は、その基準から何段上かで読むので、気温が変わっても、絶対音感がなくても読めるんですよ。
- BANNO
- もし1本だけ、うまく鳴らなかったらどうなるんですか?
- HIGEDARUMA
- 誤り訂正という仕掛けが入っていて、ほかの笛の情報から、鳴らなかった1本を穴埋めできるんです。
- BANNO
- いざという時に読めなかったら困りますもんね。そこまで考えてあるのは安心です。
- BANNO
- 実際に読み出すときは、どうするんですか?
- HIGEDARUMA
- 笛を順番に吹いて、スマホのウェブアプリに聞かせるだけです。アプリを入れておけば、ネットがなくても動きます。
- BANNO
- そこまでは、わかりやすいですね。でも、スマホすらいらないって言っていましたよね?
- HIGEDARUMA
- そうなんです。笛と同じ高さの音を、そのへんのピアノで探せば、耳だけで読めるんです。
- HIGEDARUMA
- ピアノがなければ、3Dプリントした照合笛を使います。12個の音が番号つきで並んだ、読み取り用の物差しなんです。
- BANNO
- 物差しの笛と、秘密の笛を聞き比べるんですか?
- HIGEDARUMA
- はい。高さが近いと、ワンワンという音の揺れが出るんです。ぴったり同じになると、その揺れがすっと消える。消えた番号が答えです。
- HIGEDARUMA
- さらに、紙の早見表を使えば、さっきの穴埋めの計算まで手でできるんです。
- BANNO
- スマホもパソコンも使わずに。でも、なぜそこまで機械に頼らないようにしたんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- 作者は、冲方丁さんのSF小説がきっかけの一つだと書いています。
- HIGEDARUMA
- 電子のデータは、誰かがコピーを続けないと消えてしまう。でもプラスチックは、千年単位で残り続ける、という話なんです。
- BANNO
- プラスチックが残り続けるって、ふつうは環境問題の話ですよね。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。作者は、その「朽ちない」という短所が、子孫への贈り物としては長所にひっくり返る、と見たんです。
- HIGEDARUMA
- AIやインターネット、計算機さえ今ほど使えない未来が来る可能性も、ゼロではない。その備えでもあるそうです。
- BANNO
- 秘密を、何百年先にも届く形にしておく。ロマンがありますね。
- HIGEDARUMA
- しかも秘密は笛の長さ、つまり寸法なので、印刷の文字と違って、表面が傷んでも消えないんですよ。
- BANNO
- 日用品の中に隠すという話でしたけど、どんなものがあるんですか?
- HIGEDARUMA
- たとえば、ペン立ての箱。中のペンを出して窓を開けて、初めて笛が吹けるんです。
- HIGEDARUMA
- 本立ての作例では、底の板に笛が36本並んでいます。
- BANNO
- 言われなければ、ただの本立てにしか見えないですね。
- BANNO
- でも、自分の好きな形に笛を入れるのは、難しそうです。
- HIGEDARUMA
- そこはAIの出番なんです。作者は、AIに渡すための手順書を公開しています。
- HIGEDARUMA
- 「CipherFluteのスキルを使って、この3Dモデルに笛を埋め込んで」と頼むだけで、手持ちのモデルに笛が入るんです。
- BANNO
- 今日の作例も、そうやって作ったんですか?
- HIGEDARUMA
- はい。全部、手で設計図をいじらずに、文章の指示だけで作ったそうです。
- HIGEDARUMA
- ただ、笛の形のくぼみを先に彫っておかないと、周りの材料が空洞を埋めて鳴らなくなるんです。
- HIGEDARUMA
- そこで、印刷する前に2つの検査をかけて、鳴らない物を作る失敗をほぼ防いでいるんですよ。
- BANNO
- 失敗しやすいところを、先に道具にしてあるんですね。さすがです。
- BANNO
- ほかに、印象に残った作例はありますか?
- HIGEDARUMA
- ハートを抜いたペアカードです。2枚を並べるとハートが現れて、秘密も2枚そろって初めて戻るんです。
- BANNO
- 割符みたいですね。1枚だけ拾われても、秘密は分からないと。
- HIGEDARUMA
- まさに割符です。秘密分散という方法で、1枚からは何も分からないんですよ。
- HIGEDARUMA
- かるたの札もあります。百人一首の「瀬をはやみ」を、上の句と下の句の2枚に分けたキーホルダーです。
- BANNO
- あの歌、最後は「われても末に逢はむとぞ思ふ」ですよね。別れても、いつかまた会おう、という。
- HIGEDARUMA
- そうなんです。歌の中身が、そのまま秘密分散なんですよ。
- BANNO
- うわあ、遊び心がすごい。北斎の絵のタイルもあるんですよね。
- HIGEDARUMA
- はい。神奈川沖浪裏を9枚のタイルに分けて、どの2枚がそろっても秘密が戻るようになっています。
- BANNO
- これ、本物の大事な合言葉にも、すぐ使っていいんでしょうか?
- HIGEDARUMA
- そこは正直に伝えておきたいです。吹いた音は周りに聞こえるので、録音されたら秘密が漏れます。
- HIGEDARUMA
- 今日の作例はデモ用で、仮想通貨の財布もテスト用の実験です。作者も、本番では合言葉と組み合わせるよう勧めています。
- BANNO
- だから、いざという時に1回だけ読み出す使い方なんですね。
- BANNO
- 作ったのは、栗原一貴さん。ずっと笛づくりを続けてきた作り手なんですよね。
- HIGEDARUMA
- はい。AIと一緒に曲を吹ける笛を作り、カードの形の笛を作り、今度はそれを秘密の入れ物にしたんです。
- HIGEDARUMA
- 作者は、個々人が未来に伝えるためのものづくりを切り拓きたい、と書いています。
- BANNO
- 造形データやアプリ、AIの手順書のリンクは、概要欄に置いておきますね。
- BANNO
- では、今日の一歩。3Dプリンタを持っている人は、公開されている笛を数本、印刷してみてください。
- HIGEDARUMA
- 読み出し用のウェブページを開いて吹くだけで、音が記号に変わるのを試せます。作者いわく、5分で試せるそうです。
- BANNO
- 3Dプリンタがない人は、未来の誰かに形で残したいものを、ひとつ思い浮かべてみてください。
- BANNO
- さて、今日紹介したのは、吹くと秘密がよみがえる笛、CipherFluteでした。
- HIGEDARUMA
- 次回の作品でも、ゆっくりしていってね。
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